今日も今日とて……凝りもせず、大学の講義がある日はほぼ毎日…俺は高野に告白されている……。

しかも高野は毎回、いろんなシュチュエーションで告白してくるのだ。

まぁ……そんなにもバラエティー豊かなシュチュエーションがあるものだ……と、ある意味、感心する……。

今回のシュチュエーションは……放課後の部活帰り、如月バージョン……と、でも命名しよう。

部活を終え、俺は練習着から普段着に着替えを済ませて、駐輪場へと向かうと……そこに、ポツン……と、一人……高野が立っていた。

……と、いうか……この場合、『待ち伏せていた……』と、言った方が正しいのかもしれない……。

俺は高野を見ることもまして声をかけることなく……前を通り過ぎようとした瞬間……黒色のカジュアルコートの袖を高野が掴み、自分の方へと引っ張ると同時に告白された……と、いうわけだ。

そもそもなんで高野が俺のことを想い、告白するに至ったのか……その理由(わけ)は分からない……。

ただ……大学に入学した時、経済学部の学生の一人として高野はいた。

ろくに話もしたことがないのに……いきなり告白された。

その日を境に……高野は常に俺につきまとい、これまで数え切れない程の告白をされ続けている……。

そんな彼女に周りの学生達は徐々に距離を置き、『変な(ヤツ)』と一線を引かれているのだった……。

「ーーっ……」

……また、か……。

俺は少々、乱暴に高野の腕を振りはらい、うんざりとした表情(かお)をするも…高野は至って普通……ケロッと、している。

「……あ、のな……高野……」

「ん? なーに?」

俺よりも頭一つ半分背の低い高野が上目遣いに潤んだ瞳で俺を見つめた。

異性からそんな瞳を向けられたら……きっと、恋愛対象として見てなくても、思わずドキッ……と、胸をときめかせるのだろうが俺はときめくことなく、きっぱりと言う。

「もう、いい加減にしてくれないか。ハッキリ言って、迷惑だ」

これでも告白時当初は……人として、自分に想いを抱き、勇気を出して告白してくれた高野のことを傷つけないように……と、態度も言葉にも気をつけて、丁重に断っていた……。

けれど……この状況がそろそろニ年近くにもなってくると……流石に俺も心底、高野のことをうっとおしく思うようになり、それが態度や言葉使いまでに現れ、相手の『気持ちを思いやる……』と、いう優しさはとっくになくなっていた…。

「こんなこと続けるよりもさっさと俺のことは諦めて、他の(ヤツ)を好きになれよ」

「イヤ」

「イヤって、お前……こんなこと続けてて、時間のムダって、思わないのか……」

「思わない。それに……」

ずいっ……と、高野が背伸びをして、顔を近づけた。

ふわっ……。

微かに甘い花の香りが鼻腔をくすぐる。

「駿くんが私と付き合ってくれたら……時間のムダにはならないよ」

満面の笑みを浮かべて、言った。

「なっ……」

「ーーって、ゆーことで付き合おうっ!」 

「なんでそうなるんだよっ! そもそもなんで、俺なんかにつきまとい続けるんだよっ!」

「そんなの決まってるじゃないっ! 好きだからっ‼」

高野は恥ずかしがることなく、キッパリと言い切った。

「もー何度も言ってるんだから……分かりきってることでしょ? 私は駿くんのことが好きだから……振り向いてほしい……。私のことを好きになって、一緒にいてほしいって、思ってるの。だから、何度フラれたって、諦めない」

「諦めない……って、お前……限度ってもんがあるだろ……。もう散々フラれてるんだ、いい加減見込みないって、気づけよっ! それに俺はっ……」

……どうしよう……。

言うべきか、言わぬべきか……。

俺は続く言葉を言うのを躊躇った……。

「……駿……くん……?」

そんな俺に高野が『どうしたの……?』と、いう表情(かお)で見つめていた……。

「……俺は……なに?」

呟くように高野が問う……。

「ねぇ……なに……?」

「……」

「駿くん……言いたいことがあるなら……ちゃんと言って……」

高野の漆黒の瞳がじーっと、俺のことを真剣に見つめ続けていて、俺は何故だか瞳をそらすことが出来ずにいた……。

本来なら誰にも知られたくない俺のプライベート……。

だけど……もしも、このことを話したら……高野がキッパリと俺のことを諦めてくれるのではないか……とも、思った……。

「ーーっ……」

ぐっ……と、拳を強く握りしめ、俺はゆっくりと口を開いたーー……。