待ち合わせ場所野駅の改札口前に着いた俺はズボンのポケットから携帯電話を取り出して、時間を確認した。
高野との待ち合わせ時間は九時。
携帯電話の画面に表示された時刻は……八時三十分……。
『ちょっと』どころではない……。
今日はいつになく、緊張とソワソワと落ち着きのない気持ちが入り混ざり、俺は心の余裕がなかった……。
どうして……?
……遠出することが初めてだから……?
これまで高野とは部活がない日や休日にカフェやカラオケ、ウインドーショッピング等……ちょっとしたお出かけ……いわゆる『デート』と、いうやつをしたことがあるので何を今さら緊張し、ソワソワと落ち着き気持ちが入り混ざるのか……不思議でならなかった……。
こらっ、しっかりしろっ‼
近場だろうと、遠出だろうと高野と一緒に楽しめばいいんだっ‼
ぐっ…と、拳を握りしめ、己を鼓舞して、息を整えた……。
「駿くんっ‼」
突然、名前を呼ばれて俺は慌てた……。
声のした方へと視線を向ける……。
「ーーっ……」
息を呑んだ……。
普段から私服は見慣れているのに……今日はいつもより違った感じに見えたから……。
高野は落ち着いたダーク系のグリーンのVネックのトップスに薄いブラウン系のざっくりニットを羽織り、ニットと同系色の濃いブラウンのロング丈のフレアスカートに黒色のショートブーツ。
ファーのショルダーカバンを肩に掛け、髪の毛は緩くパーマをかけ、後ろでまとめているようだった。
「ごっ、めんっ! 待たせた⁉」
数メートル先から俺に向かって手を振りながら、パタパタ……と、走って来ていた。
ーーっ⁉
あと少し……と、いうところで高野の身体がグラッ……と、傾いた……。
危ないっ‼
俺は咄嗟に腕をのばして、高野を抱きとめた……。
初めてのことだった……。
高野をこんなにも間近に感じるのは……。
ふわっ……と、微かに香った花の香と体温にドキッ……と、胸が高鳴る…。
「……だ、いじょうぶか……?」
ゆっくりと高野に視線を合わせると……高野は顔を真っ赤に染め上げ、恥ずかしそうに言った。
「……ご、めん……。躓いちゃった……。めちゃくちゃ恥ずかしい……」
「怪我……ないか?」
「あっ、うん……。助けてくれてありがとう」
「それなら……よかっ……」
俺は最後まで言葉を口に出来なかった……。
それは……あまりにも高野の顔が間近にあったことと高野が無事なのにも関わらず……ずっと抱きしめていたから……。
「あ、そ、のっ……悪いっ!」
いくら危なかったとはいえ……いきなりの抱きしめるなんて……。
俺はパッと、手を離して高野から距離を取った。
「ううん。駿くんが助けてくれなかったら、私……ハデに転んでたよ。そっちの方が今よりももっと恥ずかしかったと思う。助けてくれて本当にありがと」
高野は花が綻ぶような柔らかな笑顔を浮かべて、微笑んだ。
ドキッ‼
俺の胸がさらに大きく高鳴った……。
「ごめんね、待たせて…」
「いや、待ってないよ。俺が早めに着きすぎただけだから……」
「そう、なの……?」
「ほらっ、時計見てみろよ」
ズボンのポケットにおさめていた携帯電話を再び取り出して、電源を入れて、二人で時間を確認した。
「……ホントだ……。私、駿くんがいたから……遅かったかな……って、焦ったよ……」
「全然。俺もさっき、来たところだし。高野待たせちゃ悪い……って、思って早めに出てきた」
「あっ! 私も。駿くん待たせちゃ悪い……って、思って……。同じように思ってたんだね。なんか、嬉しい」
そんなちょっとした何気ないことも高野は嬉しそうに喜び、素直に口にする。
その姿がとても可愛くて……俺の口許が自然と緩んだ……。
「……高野、ちょっと早いけど……行くか」
「うんっ!」
高野が大きく頷いた。
俺達は改札を抜けて、水族館へと向かう電車が来るのを肩を並べて待ったーー……。
高野との待ち合わせ時間は九時。
携帯電話の画面に表示された時刻は……八時三十分……。
『ちょっと』どころではない……。
今日はいつになく、緊張とソワソワと落ち着きのない気持ちが入り混ざり、俺は心の余裕がなかった……。
どうして……?
……遠出することが初めてだから……?
これまで高野とは部活がない日や休日にカフェやカラオケ、ウインドーショッピング等……ちょっとしたお出かけ……いわゆる『デート』と、いうやつをしたことがあるので何を今さら緊張し、ソワソワと落ち着き気持ちが入り混ざるのか……不思議でならなかった……。
こらっ、しっかりしろっ‼
近場だろうと、遠出だろうと高野と一緒に楽しめばいいんだっ‼
ぐっ…と、拳を握りしめ、己を鼓舞して、息を整えた……。
「駿くんっ‼」
突然、名前を呼ばれて俺は慌てた……。
声のした方へと視線を向ける……。
「ーーっ……」
息を呑んだ……。
普段から私服は見慣れているのに……今日はいつもより違った感じに見えたから……。
高野は落ち着いたダーク系のグリーンのVネックのトップスに薄いブラウン系のざっくりニットを羽織り、ニットと同系色の濃いブラウンのロング丈のフレアスカートに黒色のショートブーツ。
ファーのショルダーカバンを肩に掛け、髪の毛は緩くパーマをかけ、後ろでまとめているようだった。
「ごっ、めんっ! 待たせた⁉」
数メートル先から俺に向かって手を振りながら、パタパタ……と、走って来ていた。
ーーっ⁉
あと少し……と、いうところで高野の身体がグラッ……と、傾いた……。
危ないっ‼
俺は咄嗟に腕をのばして、高野を抱きとめた……。
初めてのことだった……。
高野をこんなにも間近に感じるのは……。
ふわっ……と、微かに香った花の香と体温にドキッ……と、胸が高鳴る…。
「……だ、いじょうぶか……?」
ゆっくりと高野に視線を合わせると……高野は顔を真っ赤に染め上げ、恥ずかしそうに言った。
「……ご、めん……。躓いちゃった……。めちゃくちゃ恥ずかしい……」
「怪我……ないか?」
「あっ、うん……。助けてくれてありがとう」
「それなら……よかっ……」
俺は最後まで言葉を口に出来なかった……。
それは……あまりにも高野の顔が間近にあったことと高野が無事なのにも関わらず……ずっと抱きしめていたから……。
「あ、そ、のっ……悪いっ!」
いくら危なかったとはいえ……いきなりの抱きしめるなんて……。
俺はパッと、手を離して高野から距離を取った。
「ううん。駿くんが助けてくれなかったら、私……ハデに転んでたよ。そっちの方が今よりももっと恥ずかしかったと思う。助けてくれて本当にありがと」
高野は花が綻ぶような柔らかな笑顔を浮かべて、微笑んだ。
ドキッ‼
俺の胸がさらに大きく高鳴った……。
「ごめんね、待たせて…」
「いや、待ってないよ。俺が早めに着きすぎただけだから……」
「そう、なの……?」
「ほらっ、時計見てみろよ」
ズボンのポケットにおさめていた携帯電話を再び取り出して、電源を入れて、二人で時間を確認した。
「……ホントだ……。私、駿くんがいたから……遅かったかな……って、焦ったよ……」
「全然。俺もさっき、来たところだし。高野待たせちゃ悪い……って、思って早めに出てきた」
「あっ! 私も。駿くん待たせちゃ悪い……って、思って……。同じように思ってたんだね。なんか、嬉しい」
そんなちょっとした何気ないことも高野は嬉しそうに喜び、素直に口にする。
その姿がとても可愛くて……俺の口許が自然と緩んだ……。
「……高野、ちょっと早いけど……行くか」
「うんっ!」
高野が大きく頷いた。
俺達は改札を抜けて、水族館へと向かう電車が来るのを肩を並べて待ったーー……。