最近のサフィーは少し元気がないように見える。オレの気のせいかもしれないが、なんとなく元気がないというか悩んでいるというか…。
「なぁ、サフィー。」
「なに?トム?」
「体調が悪いのか?栄養のあるもの食べられてなかったもんな。明日、鶏小屋を掃除する代わりに卵を分けてもらえるようなとこ探してみるよ。」
「違うの!元気よ、私!パンとスープも食べてるし平気!」
サフィーはそう言ったがやっぱり心配だった。急にオレを見たかと思えば考え事をしてるみたいに俯いたりする。本人が言いたくないなら無理矢理聞くのも良くないかと思って様子を見ることにした。オレはこの判断を後々に後悔することになる。
ある夜、家に帰るとサフィーがいなかった。
夜のスラムを出歩くなんて危険すぎる。何か知ってるかと思い、ティミーの家に行った。両親に夜分に突然訪ねたことを謝りながらティミーに聞く。
「サフィーがいないんだ‼︎何か知らないか⁈」
「サフィーが…」
ティミーが考え込む。そして、首を傾げながら
「サフィーとこの間、トムの隠し扉の中を見た…。ひとつだけ……トムがこの間、失敗したとこ。パパラチアサファイアの屋敷の絵だけすごく見ていたんだ。珍しい宝石の話をしただけだったんだけど…。俺、なんかやばいことしたのか…?」
不安そうにオレを見た。オレは嫌な汗をかき、動悸がしたがティミーに知られないように笑顔になる。
「そうか!分かった!ありがとうな。大丈夫だよ。夜遅くごめんな。いい夢を見るんだぞ。」
ティミーの頭をくしゃりと撫で、ティミーの両親にお礼を言った。
オレは屋敷に向かった。
サフィーが何を考えたのかオレには分からなかった。ただ、パパラチアサファイアのあるあの屋敷にサフィーがいる、そう思った。前に潜り込んだときと同じ道のりを進む。キッチン付近を通ると扉があいているようだったのでそこから侵入する。薄暗い屋敷の冷たい廊下を足音を立てないように滑らせながら歩く。するとガシャーン‼︎と物音がして、高い悲鳴と低い怒号が聞こえてきた。
「この卑しい盗人が!」
「盗んだものを返せ!なにをつけているんだ…貴族の紋章の入ったペンダント?これはお前みたいな卑しい身分のやつが持っているようなものではない!」
「やめて!!!それは私のなの!!!」
悲痛な叫びが聞こえた。声の方に走るとサフィーが2人の男に髪やペンダントを掴まれている。ペンダントを掴まれているので首が締まっているのか、苦しげに歪められた表情が見えた。
「離せ!!!」
サフィーの元に走り、その勢いのまま、男たちにタックルする。サフィーは解放されるが、すぐにこちらを取り押さえに来た。男たちは屋敷の警護をしている者のようでオレが敵う相手ではない。
「トム!!!」
「サフィー!!!」
オレは取り押さえられながらもサフィーが無事なことに安堵した。2人の男がオレを押さえつけたときに、1人の杖をついた太った男が現れた。
「なんの騒ぎだ?」
「主人!この怪しい奴らが屋敷に侵入していたのです!」
「こいつらが?」
サフィーとオレをじろりと見る。サフィーは体をこわばらせた。屋敷の主人らしき男はフンと鼻を鳴らし、
「この卑しいスラムの下民が。前にあった怪盗騒ぎもお前らか?泥棒風情がふざけた真似を‼︎」
「ぐっ‼︎」
屋敷の主人が杖でオレを殴る。背中に当たって息が苦しい。サフィーがオレに駆け寄ろうとする。
「っ…‼︎」
咄嗟に男たちをふりほどき、サフィーの胸ぐらを掴む。
「トム…?」
サフィーが涙声でオレを呼ぶ。サフィーがこの屋敷にいるかもしれないと思ったときから、オレはいざとなったらこうすると決めていた。胸ぐらを掴んではいるが痛くないようにサフィーを引き寄せる。そして耳元で囁いた。
「いいか?オレが足止めをするから逃げろ。ティミーのとこでもどこでもいい。なるべく、安全なところへ。逃げれるとこまで逃げるんだ。」
「だめだよ!家族だもん!一緒に帰ろう…!」
パッとサフィーがオレを見つめる。一瞬のことなのに目の前の青を見ると時間が止まったようだった。
「相変わらず、星空みたいな瞳だな。さよなら、オレのスターサファイア。君なんか、オレの家族じゃない。どっか行っちまえ。」
強く抱きしめてから思いっきり突き飛ばす。
「これはオレが奪った宝石だ‼︎返して欲しかったら捕まえてみろ!」
胸ぐらを掴んだときにサフィーから奪ったパパラチアサファイアを掲げて叫ぶ。男たちと屋敷の主人に向かってむちゃくちゃに暴れる。3人の男がオレに気を取られているうちに、サフィーはボロボロ涙を流しながら屋敷の中を走っていった。それでいい。
覚悟を決めたオレは思いの外、粘った。大健闘の末、取り押さえられたが、その頃にはサフィーの姿は見当たらない。
「もう1人、女の方はどこにいった!おい、お前!逃しやがったな!」
「女が消えたんだろ?そんなの怪盗にでも攫われたんじゃないか?」
ハッと笑ってやった。奴隷だった頃のサフィーを盗んだのはオレだと確信した屋敷の主人は、怒り狂って杖を振り上げる。オレの意識はそこで途切れた。
「なぁ、サフィー。」
「なに?トム?」
「体調が悪いのか?栄養のあるもの食べられてなかったもんな。明日、鶏小屋を掃除する代わりに卵を分けてもらえるようなとこ探してみるよ。」
「違うの!元気よ、私!パンとスープも食べてるし平気!」
サフィーはそう言ったがやっぱり心配だった。急にオレを見たかと思えば考え事をしてるみたいに俯いたりする。本人が言いたくないなら無理矢理聞くのも良くないかと思って様子を見ることにした。オレはこの判断を後々に後悔することになる。
ある夜、家に帰るとサフィーがいなかった。
夜のスラムを出歩くなんて危険すぎる。何か知ってるかと思い、ティミーの家に行った。両親に夜分に突然訪ねたことを謝りながらティミーに聞く。
「サフィーがいないんだ‼︎何か知らないか⁈」
「サフィーが…」
ティミーが考え込む。そして、首を傾げながら
「サフィーとこの間、トムの隠し扉の中を見た…。ひとつだけ……トムがこの間、失敗したとこ。パパラチアサファイアの屋敷の絵だけすごく見ていたんだ。珍しい宝石の話をしただけだったんだけど…。俺、なんかやばいことしたのか…?」
不安そうにオレを見た。オレは嫌な汗をかき、動悸がしたがティミーに知られないように笑顔になる。
「そうか!分かった!ありがとうな。大丈夫だよ。夜遅くごめんな。いい夢を見るんだぞ。」
ティミーの頭をくしゃりと撫で、ティミーの両親にお礼を言った。
オレは屋敷に向かった。
サフィーが何を考えたのかオレには分からなかった。ただ、パパラチアサファイアのあるあの屋敷にサフィーがいる、そう思った。前に潜り込んだときと同じ道のりを進む。キッチン付近を通ると扉があいているようだったのでそこから侵入する。薄暗い屋敷の冷たい廊下を足音を立てないように滑らせながら歩く。するとガシャーン‼︎と物音がして、高い悲鳴と低い怒号が聞こえてきた。
「この卑しい盗人が!」
「盗んだものを返せ!なにをつけているんだ…貴族の紋章の入ったペンダント?これはお前みたいな卑しい身分のやつが持っているようなものではない!」
「やめて!!!それは私のなの!!!」
悲痛な叫びが聞こえた。声の方に走るとサフィーが2人の男に髪やペンダントを掴まれている。ペンダントを掴まれているので首が締まっているのか、苦しげに歪められた表情が見えた。
「離せ!!!」
サフィーの元に走り、その勢いのまま、男たちにタックルする。サフィーは解放されるが、すぐにこちらを取り押さえに来た。男たちは屋敷の警護をしている者のようでオレが敵う相手ではない。
「トム!!!」
「サフィー!!!」
オレは取り押さえられながらもサフィーが無事なことに安堵した。2人の男がオレを押さえつけたときに、1人の杖をついた太った男が現れた。
「なんの騒ぎだ?」
「主人!この怪しい奴らが屋敷に侵入していたのです!」
「こいつらが?」
サフィーとオレをじろりと見る。サフィーは体をこわばらせた。屋敷の主人らしき男はフンと鼻を鳴らし、
「この卑しいスラムの下民が。前にあった怪盗騒ぎもお前らか?泥棒風情がふざけた真似を‼︎」
「ぐっ‼︎」
屋敷の主人が杖でオレを殴る。背中に当たって息が苦しい。サフィーがオレに駆け寄ろうとする。
「っ…‼︎」
咄嗟に男たちをふりほどき、サフィーの胸ぐらを掴む。
「トム…?」
サフィーが涙声でオレを呼ぶ。サフィーがこの屋敷にいるかもしれないと思ったときから、オレはいざとなったらこうすると決めていた。胸ぐらを掴んではいるが痛くないようにサフィーを引き寄せる。そして耳元で囁いた。
「いいか?オレが足止めをするから逃げろ。ティミーのとこでもどこでもいい。なるべく、安全なところへ。逃げれるとこまで逃げるんだ。」
「だめだよ!家族だもん!一緒に帰ろう…!」
パッとサフィーがオレを見つめる。一瞬のことなのに目の前の青を見ると時間が止まったようだった。
「相変わらず、星空みたいな瞳だな。さよなら、オレのスターサファイア。君なんか、オレの家族じゃない。どっか行っちまえ。」
強く抱きしめてから思いっきり突き飛ばす。
「これはオレが奪った宝石だ‼︎返して欲しかったら捕まえてみろ!」
胸ぐらを掴んだときにサフィーから奪ったパパラチアサファイアを掲げて叫ぶ。男たちと屋敷の主人に向かってむちゃくちゃに暴れる。3人の男がオレに気を取られているうちに、サフィーはボロボロ涙を流しながら屋敷の中を走っていった。それでいい。
覚悟を決めたオレは思いの外、粘った。大健闘の末、取り押さえられたが、その頃にはサフィーの姿は見当たらない。
「もう1人、女の方はどこにいった!おい、お前!逃しやがったな!」
「女が消えたんだろ?そんなの怪盗にでも攫われたんじゃないか?」
ハッと笑ってやった。奴隷だった頃のサフィーを盗んだのはオレだと確信した屋敷の主人は、怒り狂って杖を振り上げる。オレの意識はそこで途切れた。



