いつものようにあたたかい日差しを感じながら洗濯物を見ていると見慣れない少年が近づいてきた。洗濯物を盗みにきたのだろうか、警戒して洗濯物をかばうように少年の前に立つ。少年はズンズンと私の目の前まで来て、私より少し低い身長を大きく見せるかのように背伸びをした。そして、
「お前がトムの相棒かよ!どんくさそう!」
と一言言い放った。
「な…⁉︎」
突然のことで言葉がでない。少年は続ける。
「俺が相棒にしてって言った時は大きくなったらな〜とか言ってた癖に!こんなひょろひょろの役に立たなそうな子ども連れて帰ってきて一緒に住んでるなんてトムは何考えてるんだよ!」
言われっぱなしではいけないと私も返す。
「あなたは私より子どもでしょ?背だって私より低いし!一緒に住んでもいないあなたに何が分かるのよ!」
つい勢いのまま、まくしたててしまった。ハッと少年を見ると頬を膨らまして真っ赤になって震えていた。
「おい、サフィー!ティミー!何してるんだ?」
トムの声が聞こえた。2人同時に振り返る。
「トム、おかえりなさい!ごめんなさい!洗濯物まだ入れられてないの…」
「トム!なんで俺を相棒にするの断った癖にこんな子どもと住んでるんだよ!俺の方が役に立てるじゃん!」
「だから子どもはあなたもでしょう⁉︎それも私よりもとーっても子どもだわ!」
トムは状況を察したのか、頭を抱えながらゆっくりと返した。
「サフィー、洗濯物はオレと一緒に入れよう。仕事が早く終わったんだ。ティミー、それに関してはお前が大人になったら相棒になるって約束しただろ?まぁ、いいや。一旦、2人とも家に入ろう。お菓子をもらったんだ。分けて食べよう。」
ほら、とトムに声をかけられて私とティミーという少年はしぶしぶ言い合いを止めるのだった。
家に入るとトムは汗と泥を落としてくると言って、外に出た。私とティミーの2人になった途端、空気はピリピリしたものになった。ティミーがこっそりと出来る限り低い声で私に話しかけてきた。
「お前はさ…お前はトムと一緒に住んでるからトムの秘密を知ってるんだろ?」
口を尖らせて私のことを睨んでいる。
「お前って呼ぶのやめて。私はサフィーって名前があるの。…秘密ってトムが怪盗ってこと?」
ティミーはコクリと頷いた。私はティミーが喧嘩腰だったから少し意地悪な気持ちになった。
「私はね、トムに盗まれたの。とあるお屋敷でね。どういうことか分かる?私はトムにとって宝石と同じくらい大切なのよ。あなたのことより、よっぽど大切だと思うわ。」
ふん、と言い終わってから顔を背けたら、ティミーは弾けたように椅子から立ち上がり叫んだ。
「宝石が大切⁉︎お前は本当に大切なものを知らないんだろ!トムと一緒に住んでてもトムはお前のことなんか家族と思ってない!宝石に価値なんてない!お前はここでは価値のない人間だ!」
「ティミー‼︎」
ティミーの反応に驚いてポカンとしていたら、トムが怒った顔で家に駆け込んできた。
「だって…だって、トム…!こいつが…!」
ティミーは涙ぐみながら私を睨んだ。トムはティミーと向き合うように膝をついた。
「ティミー。オレはな、相手のことを知らずに、むやみに価値がないなんていうようなやつは相棒にしない。言葉は出してしまったら戻せないんだ。」
ティミーは下唇をグッと噛んだ。トムはティミーを抱きしめながら私の方を向く。
「サフィー、君も何か言ったんだろう?ティミーは生意気ではあるけど、むやみやたらにさっきみたいなことを言うやつじゃない。」
トムにまっすぐな目で見られると心が萎むような感覚になった。
「ちょっと意地悪を言ったの…。トムはあなたより私の方が大切なのよって…。」
心が萎むのとは反対に目からは涙が溢れそうになった。トムは目を閉じて、ゆっくりため息をついた。静かな音なのにびくりと私の体が震えた。トムはティミーを椅子に座らせてから私の前にきた。
「サフィー。オレは君が大切だよ。でも誰かと比べるために君を大切にしているわけじゃない。」
優しい声ではっきりとトムは言った。私は心臓がバクバクして涙がポロポロと流れた。トムはゆっくり私を抱きしめた。
「…ごめん。」
私の涙が止まりかけたころに小さく声が聞こえた。涙を拭うとティミーが私の横に立っていた。
「ごめん。俺、羨ましくて…サフィーに価値がないなんて思ってない…。」
振り絞るような声でティミーが謝る。喧嘩したときの低い声とは違い、泣いて掠れた声は小さい少年のものだった。トムは眉を下げながらティミーと私を見る。
「ティミー、私こそ、ごめんなさい…。ひどい意地悪を言ってしまって…本当にごめんなさい。」
ティミーと向かい合って頭を下げる。トムは私とティミーの頭を撫でた。
「仲直りだね。2人とも座って。もらったお菓子と…あたたかいミルクでも用意するよ。」
この日、3人で分けたキャラメルは甘くてゆっくり溶けて、とても安心する味だった。私は人生で初めて人と大喧嘩をして仲直りをした。
「お前がトムの相棒かよ!どんくさそう!」
と一言言い放った。
「な…⁉︎」
突然のことで言葉がでない。少年は続ける。
「俺が相棒にしてって言った時は大きくなったらな〜とか言ってた癖に!こんなひょろひょろの役に立たなそうな子ども連れて帰ってきて一緒に住んでるなんてトムは何考えてるんだよ!」
言われっぱなしではいけないと私も返す。
「あなたは私より子どもでしょ?背だって私より低いし!一緒に住んでもいないあなたに何が分かるのよ!」
つい勢いのまま、まくしたててしまった。ハッと少年を見ると頬を膨らまして真っ赤になって震えていた。
「おい、サフィー!ティミー!何してるんだ?」
トムの声が聞こえた。2人同時に振り返る。
「トム、おかえりなさい!ごめんなさい!洗濯物まだ入れられてないの…」
「トム!なんで俺を相棒にするの断った癖にこんな子どもと住んでるんだよ!俺の方が役に立てるじゃん!」
「だから子どもはあなたもでしょう⁉︎それも私よりもとーっても子どもだわ!」
トムは状況を察したのか、頭を抱えながらゆっくりと返した。
「サフィー、洗濯物はオレと一緒に入れよう。仕事が早く終わったんだ。ティミー、それに関してはお前が大人になったら相棒になるって約束しただろ?まぁ、いいや。一旦、2人とも家に入ろう。お菓子をもらったんだ。分けて食べよう。」
ほら、とトムに声をかけられて私とティミーという少年はしぶしぶ言い合いを止めるのだった。
家に入るとトムは汗と泥を落としてくると言って、外に出た。私とティミーの2人になった途端、空気はピリピリしたものになった。ティミーがこっそりと出来る限り低い声で私に話しかけてきた。
「お前はさ…お前はトムと一緒に住んでるからトムの秘密を知ってるんだろ?」
口を尖らせて私のことを睨んでいる。
「お前って呼ぶのやめて。私はサフィーって名前があるの。…秘密ってトムが怪盗ってこと?」
ティミーはコクリと頷いた。私はティミーが喧嘩腰だったから少し意地悪な気持ちになった。
「私はね、トムに盗まれたの。とあるお屋敷でね。どういうことか分かる?私はトムにとって宝石と同じくらい大切なのよ。あなたのことより、よっぽど大切だと思うわ。」
ふん、と言い終わってから顔を背けたら、ティミーは弾けたように椅子から立ち上がり叫んだ。
「宝石が大切⁉︎お前は本当に大切なものを知らないんだろ!トムと一緒に住んでてもトムはお前のことなんか家族と思ってない!宝石に価値なんてない!お前はここでは価値のない人間だ!」
「ティミー‼︎」
ティミーの反応に驚いてポカンとしていたら、トムが怒った顔で家に駆け込んできた。
「だって…だって、トム…!こいつが…!」
ティミーは涙ぐみながら私を睨んだ。トムはティミーと向き合うように膝をついた。
「ティミー。オレはな、相手のことを知らずに、むやみに価値がないなんていうようなやつは相棒にしない。言葉は出してしまったら戻せないんだ。」
ティミーは下唇をグッと噛んだ。トムはティミーを抱きしめながら私の方を向く。
「サフィー、君も何か言ったんだろう?ティミーは生意気ではあるけど、むやみやたらにさっきみたいなことを言うやつじゃない。」
トムにまっすぐな目で見られると心が萎むような感覚になった。
「ちょっと意地悪を言ったの…。トムはあなたより私の方が大切なのよって…。」
心が萎むのとは反対に目からは涙が溢れそうになった。トムは目を閉じて、ゆっくりため息をついた。静かな音なのにびくりと私の体が震えた。トムはティミーを椅子に座らせてから私の前にきた。
「サフィー。オレは君が大切だよ。でも誰かと比べるために君を大切にしているわけじゃない。」
優しい声ではっきりとトムは言った。私は心臓がバクバクして涙がポロポロと流れた。トムはゆっくり私を抱きしめた。
「…ごめん。」
私の涙が止まりかけたころに小さく声が聞こえた。涙を拭うとティミーが私の横に立っていた。
「ごめん。俺、羨ましくて…サフィーに価値がないなんて思ってない…。」
振り絞るような声でティミーが謝る。喧嘩したときの低い声とは違い、泣いて掠れた声は小さい少年のものだった。トムは眉を下げながらティミーと私を見る。
「ティミー、私こそ、ごめんなさい…。ひどい意地悪を言ってしまって…本当にごめんなさい。」
ティミーと向かい合って頭を下げる。トムは私とティミーの頭を撫でた。
「仲直りだね。2人とも座って。もらったお菓子と…あたたかいミルクでも用意するよ。」
この日、3人で分けたキャラメルは甘くてゆっくり溶けて、とても安心する味だった。私は人生で初めて人と大喧嘩をして仲直りをした。