希少でピンク色に輝く、サファイアの中で最も美しいとされる『パパラチアサファイア』。そんな宝石、卑しい貴族には似合わない。

オレはカードを用意しながら、鼻歌を歌っていた。『最も美しいサファイアをいただきます』と書かれたカードをタキシードに入れる。ここは貧富の差が大きい国だ。それも卑しい貴族がどんどん金を巻き上げるため、貧しい人は、より貧しくなる一方。オレはスラムの中では、マシな生活をしているが色んな話を聞く。最近は何人もの子供が貴族に攫われた。スラムの子供など減っても気付かれない、年頃の娘は卑しい貴族に高く売れるということらしい。こんな醜い国でオレは、夜な夜な怪盗として活躍していた。貴族から盗んだ宝石や美品を売って、金貨に変える。自分が生きれる分だけ残して、残りはスラムの住人にこっそりオレと分からないように配った。それでもスラムは明日を過ごせるかも分からないような生活だ。
ただの泥棒ではスラムの人間と勘づかれるが、一張羅のタキシードを着てカードを残して怪盗と名乗ると意外にも疑われることはなかった。

その夜の標的は、とある屋敷の『パパラチアサファイア』だった。希少な宝石で高く売れる。スムーズに屋敷の窓に辿り着いたが、練習したはずのピッキングがうまくいかなかった。まずい、これは窓を割らなければ侵入出来ない。部屋の構造も念入りに調べたのに、全部水の泡となりそうだ。焦っていたら『コツコツ』と音が聞こえた。音の方を見ると少女がこちらを見ている。ここは屋敷の持ち主である男の部屋なはず。少女に聞いてみる。
「君はここの奥さん?メイドではないよね、それにしてはちょっと服が…」
少女にはアンバランスな扇状的な服。それを見たときに最近攫われたスラムの子供たちの話を思い出した。卑しい貴族に売られる少女、その少女たちがどのように扱われるかなんて想像するに容易い。
「君は最近買われた?」
少女はうなずく。オレは眉を顰めた。
「予定を変えるか。」
小さくつぶやいた。ニコリと笑って少女の方を向く。少女に指示を出して部屋を中から開けてもらった。
「あなたは……泥棒?」
「泥棒とは失礼な!オレに泥棒なんて呼び方は似合わない‼︎怪盗だよ、怪盗!」
少女にマントを見せる。
「ところで何を盗みに?」
オレは咳払いをして改まり、宣言をする。
「オレは君を盗みにきた!」
オレは少女に嘘をついた。宝石はいつでもいい。人を1人連れて行くのに宝石まで盗む余裕はオレにはない。少女の手を引き、外へ連れ出す。月の光が少女の目に入り込んだ。青い目がキラキラと輝く。途端にカードの存在を思い出し、タキシードを漁る。
「あ!そうそう!え〜と…これ!」
オレは部屋にカードを投げ入れ、少女をそのまま連れ出した。

オレはその夜に青く美しく輝くサファイアのような目をした少女を盗み出した。