こちらを見下ろす瞳の色が、先程の炎を思わせた。
華音が身構えると、脳内でオズワルドが言った。
『火星の魔女――――エンテだ』
「エンテ……」
華音が復唱すると、エンテは無感動な口調で「おおー」と声を上げた。
「ぼくの名前、正解。じゃあ、お前の名前も教えて?」
「……は?」
「オズワルドだけど、オズワルドじゃないんでしょ? だから、名前。まさか、ないとかないよね」
エンテは塀から飛び降り、爪先立ちでググッと華音に無表情な顔を近付けた。相手が小柄だから、華音は見上げられている状態だ。
仰け反る華音の脳内に、またオズワルドの声が響く。
『倒したいところだが、こちらに時間がない。ここは一旦引くぞ』
憑依時間はあと僅か。その間に、精霊を取り込んだと言う相手を倒せる筈がない。華音も納得し、エンテから飛び退いて塀の上に着地した。
エンテはゆっくり首を傾ける。
「何? どうしたの?」
疑問に応えず、華音は塀の上を走り去った。
幸い、エンテがついて来る気配はなく、人目のないところで憑依が解けた。
華音は息をつく。
ふと、視界の端で民家の庭木に青みがかった烏が止まった。
バサッと、羽が舞い落ちる。
「ゴルゴ! さっきはありがとう」
言葉が通じるか未だに不明だが、一応礼を言っておく。
使い魔は返事の代わりに、小首を傾げた。
華音は先程の火災現場の方を眺めた。
炎は大分鎮まり、空気も透明感を取り戻していた。救急車のサイレンの音が響き、きっとあの女の子が病院へ運ばれたのだと安心した。
火事の件はひとまず大丈夫そうだ。
それよりも、火星の魔女の事だ。
何故、火災現場近くで出くわした? 桜花が見たと言う火災現場から飛び出す魔物と思しき謎の影との関連性は?
華音は思考を巡らせる。
バサバサと、使い魔が飛んで来て華音の肩に乗った。まるで、今は深く考えるなと言っている様だった。
もしかしたら、オズワルドがスペクルムからこちらの様子を見て、そう伝えたかったのかもしれない。
華音は使い魔の頭を撫で、気持ちを切り替えて帰宅する事にした。
火星の魔女に出くわした事をまず桜花に報告し、スマートフォンを脇に放って、ふかふかしたソファーの背凭れに背中を預けた。
後ろから、水戸の足音が近付いて来る。
「華音くん、お茶をどうぞ」
水戸が華音の目の前に温めたティーカップを置き、硝子のティーポットから美しいオレンジの水色の紅茶を注いだ。
湯気が立ち昇り、上品な花の香りが漂った。
「ありがとう。……あ」
華音は思い出した。水戸の為に、駅でスイーツを買う事を。
水戸は少しスペースを空けて、華音の隣に腰を下ろして、タレた焦げ茶色の瞳を瞬かせた。
「何か忘れ物ですか?」
「うん。すっかり忘れてた……」
華音は紅茶に角砂糖を一つ入れ、スプーンでグルグル掻き回しつつも頭を抱えた。
「私に出来る事なら、遠慮なく言って下さいね?」
水戸がそう言うと、華音の手がピタッと止まった。視線は水戸に向けられ、水戸はドキッとした。
「華音くん……?」
「水戸さん。水戸さんは何が好き?」
「えっ」
また、水戸の心臓が跳ねた。
華音の漆黒の瞳に自分が映っているのが面映ゆい。
“好き”その単語に、目の前に居る華音の顔が最初に浮かんだ。いや、質問の答えとしては違うと、水戸は首を振って考え直す。けれど、結局質問の意図が分からず、訊き返した。
「それはどう言う事でしょう? 私の好きなものは色々とありますけど……。どれが華音くんの望む答えなのか……」
「あ。ごめん。どう言うスイーツが好きなのかなって。嫌いって事はないよね。いつもお菓子を作ってくれるし」
華音はふわりと笑った。
その笑みも、水戸の心臓の動きを活発にした。
水戸は熱を帯びていく頬を隠す様に片手を添え、天井を眺めながら考えた。
「スイーツですか。確かに甘い物は大好物ですけれど、どれかって言われれば……。あ、そうだ」
水戸は視線を華音へ戻し、ニコッと笑った。
「私、モンブランが好きです」
「モ、モンブラン……」
華音の脳裏を掠めたのは、カレーライスをやたら主張してくる、スイーツとしても――――否、食べ物として不合格なあのモンブランだった。
華音はそんな事ある筈ないと、水戸の顔色を窺いながら恐る恐るその食べ物の名を口にした。
「カレーライスの……?」
「カレーライス? モンブランなのに、カレーライスなんですか?」
水戸が疑問を露にし、華音は心の中でそっと息を吐いた。
「何でもない。それよりも、モンブランなんだね。勿論栗の、だよね?」
「そうです。モンブランって、ケーキの形状を現す言葉ですからね。私は栗のモンブランが一番好きです」
「今日、本当はスイーツ買ってくるつもりだったんだ。今度、栗のモンブラン買ってくるよ」
「えっ! あ、ありがとうございます」
「今日も美味しい」
華音がお茶を一口飲み微笑む。その横顔を少しの間眺めた後、水戸は席を立つ。
「クッキーが焼けたので持ってきますね」
水戸は香ばしい匂いのする方へ、パステルイエローのエプロンを翻して歩いていった。
華音が浴槽に浸かり、1日の疲れを癒していると、外からけたたましいサイレンの音が響いてきた。
昨日までは「また火事か」の一言で終わっていたそれも、火星の魔女を見掛けてからは焦りに変わった。
数時間前の事で、まだ火星の魔女と火事との関連性ははっきりとしていないが、不安要素が消えた訳ではなかった。
落ち着かない華音の耳に、今度はオズワルドの落ち着いた声が聞こえて来た。
「魔物が現れた。……エンテも。私とした事が、一連の火事を起こしていたのが奴だと気付かなかった」
落ち着いてはいるが、やはり何処か悔しそうで焦りが垣間見えた。
華音は浴槽から上がり、シャワー横の鏡に近付いた。
全身が映る鏡に、オズワルドの姿が映っていて、早速手の平をこちらへ向けていた。
華音は戸惑う。
「え。ちょっと、待って。この状態で憑依するのか?」
「魔物と魔女が現れたんだぞ? 他にどうすると言うんだ」
「いやいや。オレ、今何も着てないし……!」
オズワルドが憑依したら白いローブを纏えるが、解けたら全裸だ。屋外でそんな状態になれば、警察のお世話になってしまう。
華音はオズワルドに背を向けた。
「服着てから! 鏡は洗面台にもあるし」
いそいそとバスルームを後にし、サッとバスタオルで身体を拭った後、服を着て、再び鏡面のオズワルドと向き合った。
火災現場付近まで来ると、魔物が飛び出して来た。
赤い双眸を光らせるその影の様な身体の形状は狼。3体居た。
華音は順に飛びかかってくる3体を杖で受け流し、背後に打撃を叩き込む。
バタバタと、魔物は倒れた。
それから、塀に飛び乗って意識を集中させる。
「アイシクルスピア!」
魔物の頭上に幾つもの氷の刃が出現し、降り注いで貫く。
消滅する魔物から生命力が舞い上がっていくのを横目に、華音は先を急ぐ。
火災現場に近付く程に、道端で倒れる人の姿が増えていく。また、彼らの生命力を孕んだ魔物との遭遇率も高くなった。
その度に、華音は魔術で魔物を倒し、人々の生命力を取り返した。
炎が間近に見えるのに、殆ど前進出来ていない。
このペースで進んでいったら、魔女のところまで辿り着いた時には憑依が解けてしまう。また、前回と同じ流れになる。
火災件数をこれ以上増やさない為にも、何としてでもここでエンテとの対決に終止符を打ちたいところだ。
飛び出して来た魔物に魔術で止めを刺していると、塀の上に黒い影が現れた。先程の狼の魔物よりもずっと小柄で、炎に照らされた毛並みは白地に茶の斑模様が入っていた。
「あれ? ね……」
『よせ、近付くな。あれは魔物だ』
いつになく真剣な声が脳内に響き、華音の足が止まった。
そうは言われても、どう見ても魔物には見えない。硝子玉の様な瞳は黄緑で、ピンと立った耳に、口角の上がった口、ゆらゆら揺れる細長い尻尾が愛らしいのに。
華音は止めた足を動かし、塀へ近付いて両手を伸ばした。
「単なる猫だよね」
抱いた手触りも、確かな重量感も、魔物のそれとは全く違う。
それなのに、脳内のオズワルドの声は上擦っていた。
『な、なな何触っているんだ! さっさと捨てろ。そして、水攻めにしろ』
この慌て様……間違いなかった。
「オズワルド。お前、猫苦手だろ」
『苦手ではない。悍ましいだけだ。見た目こそ違えど、魔物と同等。騙されるな』
「苦手なのは分かったけど、水攻めはやり過ぎだよ」
これ以上はオズワルドが可哀想な事になるので猫を離してあげようとした矢先、魔物が塀を飛び越えて出現。
顔面目掛けてきたそれに対応しようとし、思わず猫を落としてしまった。
気にしつつ、魔物を杖で受け止めて吹き飛ばす。
仰向けになった魔物の目の前を、平然と先の猫が通り過ぎ、華音は安堵。すぐに、魔術で猫……ではなく、勿論魔物を水攻めにして倒した。
また、何体か魔物を倒して進んでいくと、漸く魔女の待つ炎の城――――炎を上げる家屋の前に辿り着いた。
エンテは屋根の上に立ち、まるで炎を全身に纏っているかの様な姿で華音を見下ろしていた。
華音が身構えると、脳内でオズワルドが言った。
『火星の魔女――――エンテだ』
「エンテ……」
華音が復唱すると、エンテは無感動な口調で「おおー」と声を上げた。
「ぼくの名前、正解。じゃあ、お前の名前も教えて?」
「……は?」
「オズワルドだけど、オズワルドじゃないんでしょ? だから、名前。まさか、ないとかないよね」
エンテは塀から飛び降り、爪先立ちでググッと華音に無表情な顔を近付けた。相手が小柄だから、華音は見上げられている状態だ。
仰け反る華音の脳内に、またオズワルドの声が響く。
『倒したいところだが、こちらに時間がない。ここは一旦引くぞ』
憑依時間はあと僅か。その間に、精霊を取り込んだと言う相手を倒せる筈がない。華音も納得し、エンテから飛び退いて塀の上に着地した。
エンテはゆっくり首を傾ける。
「何? どうしたの?」
疑問に応えず、華音は塀の上を走り去った。
幸い、エンテがついて来る気配はなく、人目のないところで憑依が解けた。
華音は息をつく。
ふと、視界の端で民家の庭木に青みがかった烏が止まった。
バサッと、羽が舞い落ちる。
「ゴルゴ! さっきはありがとう」
言葉が通じるか未だに不明だが、一応礼を言っておく。
使い魔は返事の代わりに、小首を傾げた。
華音は先程の火災現場の方を眺めた。
炎は大分鎮まり、空気も透明感を取り戻していた。救急車のサイレンの音が響き、きっとあの女の子が病院へ運ばれたのだと安心した。
火事の件はひとまず大丈夫そうだ。
それよりも、火星の魔女の事だ。
何故、火災現場近くで出くわした? 桜花が見たと言う火災現場から飛び出す魔物と思しき謎の影との関連性は?
華音は思考を巡らせる。
バサバサと、使い魔が飛んで来て華音の肩に乗った。まるで、今は深く考えるなと言っている様だった。
もしかしたら、オズワルドがスペクルムからこちらの様子を見て、そう伝えたかったのかもしれない。
華音は使い魔の頭を撫で、気持ちを切り替えて帰宅する事にした。
火星の魔女に出くわした事をまず桜花に報告し、スマートフォンを脇に放って、ふかふかしたソファーの背凭れに背中を預けた。
後ろから、水戸の足音が近付いて来る。
「華音くん、お茶をどうぞ」
水戸が華音の目の前に温めたティーカップを置き、硝子のティーポットから美しいオレンジの水色の紅茶を注いだ。
湯気が立ち昇り、上品な花の香りが漂った。
「ありがとう。……あ」
華音は思い出した。水戸の為に、駅でスイーツを買う事を。
水戸は少しスペースを空けて、華音の隣に腰を下ろして、タレた焦げ茶色の瞳を瞬かせた。
「何か忘れ物ですか?」
「うん。すっかり忘れてた……」
華音は紅茶に角砂糖を一つ入れ、スプーンでグルグル掻き回しつつも頭を抱えた。
「私に出来る事なら、遠慮なく言って下さいね?」
水戸がそう言うと、華音の手がピタッと止まった。視線は水戸に向けられ、水戸はドキッとした。
「華音くん……?」
「水戸さん。水戸さんは何が好き?」
「えっ」
また、水戸の心臓が跳ねた。
華音の漆黒の瞳に自分が映っているのが面映ゆい。
“好き”その単語に、目の前に居る華音の顔が最初に浮かんだ。いや、質問の答えとしては違うと、水戸は首を振って考え直す。けれど、結局質問の意図が分からず、訊き返した。
「それはどう言う事でしょう? 私の好きなものは色々とありますけど……。どれが華音くんの望む答えなのか……」
「あ。ごめん。どう言うスイーツが好きなのかなって。嫌いって事はないよね。いつもお菓子を作ってくれるし」
華音はふわりと笑った。
その笑みも、水戸の心臓の動きを活発にした。
水戸は熱を帯びていく頬を隠す様に片手を添え、天井を眺めながら考えた。
「スイーツですか。確かに甘い物は大好物ですけれど、どれかって言われれば……。あ、そうだ」
水戸は視線を華音へ戻し、ニコッと笑った。
「私、モンブランが好きです」
「モ、モンブラン……」
華音の脳裏を掠めたのは、カレーライスをやたら主張してくる、スイーツとしても――――否、食べ物として不合格なあのモンブランだった。
華音はそんな事ある筈ないと、水戸の顔色を窺いながら恐る恐るその食べ物の名を口にした。
「カレーライスの……?」
「カレーライス? モンブランなのに、カレーライスなんですか?」
水戸が疑問を露にし、華音は心の中でそっと息を吐いた。
「何でもない。それよりも、モンブランなんだね。勿論栗の、だよね?」
「そうです。モンブランって、ケーキの形状を現す言葉ですからね。私は栗のモンブランが一番好きです」
「今日、本当はスイーツ買ってくるつもりだったんだ。今度、栗のモンブラン買ってくるよ」
「えっ! あ、ありがとうございます」
「今日も美味しい」
華音がお茶を一口飲み微笑む。その横顔を少しの間眺めた後、水戸は席を立つ。
「クッキーが焼けたので持ってきますね」
水戸は香ばしい匂いのする方へ、パステルイエローのエプロンを翻して歩いていった。
華音が浴槽に浸かり、1日の疲れを癒していると、外からけたたましいサイレンの音が響いてきた。
昨日までは「また火事か」の一言で終わっていたそれも、火星の魔女を見掛けてからは焦りに変わった。
数時間前の事で、まだ火星の魔女と火事との関連性ははっきりとしていないが、不安要素が消えた訳ではなかった。
落ち着かない華音の耳に、今度はオズワルドの落ち着いた声が聞こえて来た。
「魔物が現れた。……エンテも。私とした事が、一連の火事を起こしていたのが奴だと気付かなかった」
落ち着いてはいるが、やはり何処か悔しそうで焦りが垣間見えた。
華音は浴槽から上がり、シャワー横の鏡に近付いた。
全身が映る鏡に、オズワルドの姿が映っていて、早速手の平をこちらへ向けていた。
華音は戸惑う。
「え。ちょっと、待って。この状態で憑依するのか?」
「魔物と魔女が現れたんだぞ? 他にどうすると言うんだ」
「いやいや。オレ、今何も着てないし……!」
オズワルドが憑依したら白いローブを纏えるが、解けたら全裸だ。屋外でそんな状態になれば、警察のお世話になってしまう。
華音はオズワルドに背を向けた。
「服着てから! 鏡は洗面台にもあるし」
いそいそとバスルームを後にし、サッとバスタオルで身体を拭った後、服を着て、再び鏡面のオズワルドと向き合った。
火災現場付近まで来ると、魔物が飛び出して来た。
赤い双眸を光らせるその影の様な身体の形状は狼。3体居た。
華音は順に飛びかかってくる3体を杖で受け流し、背後に打撃を叩き込む。
バタバタと、魔物は倒れた。
それから、塀に飛び乗って意識を集中させる。
「アイシクルスピア!」
魔物の頭上に幾つもの氷の刃が出現し、降り注いで貫く。
消滅する魔物から生命力が舞い上がっていくのを横目に、華音は先を急ぐ。
火災現場に近付く程に、道端で倒れる人の姿が増えていく。また、彼らの生命力を孕んだ魔物との遭遇率も高くなった。
その度に、華音は魔術で魔物を倒し、人々の生命力を取り返した。
炎が間近に見えるのに、殆ど前進出来ていない。
このペースで進んでいったら、魔女のところまで辿り着いた時には憑依が解けてしまう。また、前回と同じ流れになる。
火災件数をこれ以上増やさない為にも、何としてでもここでエンテとの対決に終止符を打ちたいところだ。
飛び出して来た魔物に魔術で止めを刺していると、塀の上に黒い影が現れた。先程の狼の魔物よりもずっと小柄で、炎に照らされた毛並みは白地に茶の斑模様が入っていた。
「あれ? ね……」
『よせ、近付くな。あれは魔物だ』
いつになく真剣な声が脳内に響き、華音の足が止まった。
そうは言われても、どう見ても魔物には見えない。硝子玉の様な瞳は黄緑で、ピンと立った耳に、口角の上がった口、ゆらゆら揺れる細長い尻尾が愛らしいのに。
華音は止めた足を動かし、塀へ近付いて両手を伸ばした。
「単なる猫だよね」
抱いた手触りも、確かな重量感も、魔物のそれとは全く違う。
それなのに、脳内のオズワルドの声は上擦っていた。
『な、なな何触っているんだ! さっさと捨てろ。そして、水攻めにしろ』
この慌て様……間違いなかった。
「オズワルド。お前、猫苦手だろ」
『苦手ではない。悍ましいだけだ。見た目こそ違えど、魔物と同等。騙されるな』
「苦手なのは分かったけど、水攻めはやり過ぎだよ」
これ以上はオズワルドが可哀想な事になるので猫を離してあげようとした矢先、魔物が塀を飛び越えて出現。
顔面目掛けてきたそれに対応しようとし、思わず猫を落としてしまった。
気にしつつ、魔物を杖で受け止めて吹き飛ばす。
仰向けになった魔物の目の前を、平然と先の猫が通り過ぎ、華音は安堵。すぐに、魔術で猫……ではなく、勿論魔物を水攻めにして倒した。
また、何体か魔物を倒して進んでいくと、漸く魔女の待つ炎の城――――炎を上げる家屋の前に辿り着いた。
エンテは屋根の上に立ち、まるで炎を全身に纏っているかの様な姿で華音を見下ろしていた。