「初めまして。わたし、赤松桜花と言います。えっと……猫が大好きです。よろしくお願いします」
教壇で、制服に身を包んだ赤茶色の長髪の少女が頬を桜色に染めて笑った。控えめながらも、教室内によく通る声は可愛らしく、まるでアニメの美少女を連想させる声だった。
席に着いている生徒達は、歓声を上げた。男子は完全に鼻の下が伸びている者が殆どで、女子でさえ「可愛い」を連呼する者が半数を占めていた。
黒板にはその名が、男性の担任教師によって見やすい字で書かれている。
担任教師は、珍しい転校生である彼女の肩をそっと掴み、スッと後方を指差した。
「あそこの席が空いているから、あそこに座りなさい」
「はい」
桜花は柔らかい声色で返事をすると、机の間の通路を歩いていった。その際、チェリーブロッサムの香りを残して。
桜花が近くに来ると、刃の顔がだらしなく緩んだ。
「俺、風間刃。よろしくね!」
「風間くんか。わたしの方こそ、仲良くしてね」
明らかな下心を露にしている相手に対しても、変わらぬ笑みを浮かべる桜花。ふと、一つの視線に気付いて足を止めた。
「…………キミは」
そこに居たのは華音だった。
華音は優等生らしく、人当たりの良い笑みを浮かべた。
「転校生だったんだ。オレは鏡崎……。よろしく」
「……下の名前は?」
「……とにかく、席に着いた方が良いと思うけど」
「うん。そうね。…………華音」
「え?」
通り過ぎた桜花を振り返ろうとしたが、担任教師の声でホームルームが始まってしまって前を向くしかなかった。
チャイムが鳴り終わると、一気に校内はざわつきが増した。教室のみならず、廊下にも生徒が溢れ、各々の休憩時間を満喫していた。
勿論、校舎一階の正面奥にある食堂も、もう既に生徒で一杯だった。床全面に赤い絨毯が敷かれ、純白のテーブルクロスのかかった丸テーブルが並ぶ空間は、最早ホテルの広間だ。たっぷりと日差しの入り込む窓際に、和、洋、中華、実に種類豊富なメニューが並べられ、受け付けを済ませた生徒達が自由に料理を取りに行っている。
華音も、親友2人と此処で昼食を摂っていた。
「にしても、桜花ちゃんってさ。めちゃめちゃ可愛いよな! 見た目だけじゃなく、声もアニメっぽいし」
肉を咀嚼しながら、器用に刃が声を発した。
アニメっぽいと言うのはともかく、可愛いと思ったのは他の2人も同じだった。
「性格も良さそうだしな」と、雷。
「でも、何かあの娘……」
教えてもいないのに、何故か下の名前を知っていた。こちらへ向ける視線も何処か穏やかでなかった気がする。
「何だよー。かがみん。イケメンだからって、そう簡単に落とせると思うなよ?」
刃がニヤニヤ笑い、華音は首を傾けた。
「何処に落とすんだよ。オレはそんな事する気はないけど」
「おい。大丈夫か、鏡崎」
雷は、イケメンで鈍感な親友を哀れに思った。
周りでは、華音の事を観察している女子が沢山居た。中には、華音が今日、天丼を食べているからと言って同じメニューにする者も。
誰にでも分かる好意を向けられていると言うのに、その本人は全く気付いていなかった。
暫く、談笑をしながら食事をしていると、急に刃が手を止めて華音――――否、その後方を見ていた。華音と雷もそちらを見遣る。
桜花だ。両手に料理を乗せた盆を持ち、困った顔でキョロキョロしている。料理を取ったはいいが、殆ど席が埋まってしまっていて座れないのだ。
先に席を取っておくべきであるのは当然で、しっかりしている見た目の割には要領が悪いなと、華音は密かに思った。
刃が手を挙げる。
「桜花ちゃん! 此処、空いてるよ」
桜花はハッと気付き、数歩近付いて来て、華音と刃の間が空席である事を確認すると、誰の顔も一切見ずに呟く様に言った。
「い、いいの?」
「いいのいいの! てか、寧ろ座って下さいっ」
間髪入れずに刃が言い、桜花にチラッと視線を向けられた華音と雷も小さく頷いた。
男3人……しかも、チャラチャラした印象を受ける刃の居る席に躊躇しつつも、桜花は小さく礼を言って座った。
テーブルに置かれたのは、揚げ物が大きな山を築き上げている天丼だった。
とても、可憐な女子が好むとは思えない、ボリュームたっぷりのメニューだ。男子である華音でさえ、中性的なので違和感があると言うのに。
「桜花ちゃんって、そう言うの食べるんだ?」
刃が興味津々に言うと、桜花はサッと頬を赤く染めて箸を握り締めた。
「ち、違うの。間違えただけなの。ほ、本当はわたし、カルボナーラが好きなの」
「そう言う事ってあるよねぇ。俺もよくコーラと烏龍茶間違えるんだー」
「それを俺に渡すんだよな。カルボナーラって、何か女子って感じだな」
刃と雷が何の疑いもなしに相槌を打つ横で、華音は温かい緑茶を啜りながら桜花の整った横顔を見た。
此処は自分で好きな料理を取るビュッフェ式。間違える筈がない。彼女が何故嘘をついたのか分からないが、性格に表裏がありそうなのは確かだった。
帰り支度を済ませた華音は、親友2人より先に校門へ向かった。生徒が出て行く、大きな門を一歩出ると、見覚えのある後ろ姿があった。今日転校して来たばかりの桜花だ。
しゃがんで何をしているのかと思えば、彼女は黒猫を愛でていた。チラッと見えた猫の瞳はルビー色で、宝石の如く美しかった。
華音が声を掛ける前に、桜花の方が華音に気付いて立ち上がって向き直った。
「……お昼はありがとう」
声は独特の可愛らしさを残しているが、少しだけ皆の前で話していた時とトーンが下がっていた。例えるならば、綺麗な花だと思って触ったら棘を纏っていた様な。
華音は桜花の微妙な変化に気付きつつも、穏やかな表情を保った。
「お昼? あぁ……別に。最初に、刃が赤松さんを呼んだんだけどね」
「刃って、あの金髪の? そういえば、教室で最初に自己紹介してくれたんだっけ。あの人、見た目からしてちょっと悪そうな……。ううん。良い人ではあったけど。もう1人の高木くん……だっけ? も、あんまり真面目そうではないし……」
2人の第一印象は良くなかった。転校生の桜花だけではない。他の生徒や教師にだって、あまりよく思われていないのは事実だった。
親友を悪く言われるのは良い気がしないが、他人の感情は他人のモノ。そこに決まりはないのだから、仕方がない事だと華音は飲み込んだ。
桜花は、心底心配する目で華音を見た。
「……今日転校して来たわたしが言うのも大きなお世話かもしれないけれど、キミって不良に絡まれているの?」
これも、よく訊かれる事だ。華音の答えは決まっていた。
「違う。2人は親友だよ」
「親友……。そうなんだ。ごめんなさい」
桜花は何処か寂しそうな表情をし、華音から視線を逸らした。
黒猫が桜花の細い足に擦り寄った。
華音は似ていると思った。黒猫と、すぐ近くの木の上に止まっている青みがかった烏が。
「ねえ。赤松さんは何者なの? もしかして、オレの事、知ってた?」
バサバサと、使い魔の羽音が響き、桜の葉が風に乗って華音と桜花の間に落ちた。
いつの間にか生徒達が居なくなり、2人だけの空間となった。
桜花は猫を抱きかかえ、口角を上げた。
「わたしはキミと同じ魔法使いよ。華音」
「え?」
また名前を、いや、それよりも魔法使い?
桜花に対する疑念が沸くと、後ろから親友達の声が聞こえた。
2人だけの空間ではなくなると、桜花は華音に背を向けて歩き出した。チェリーブロッサムの残り香がふわりと風に乗る。
「桜花ちゃんと何話してたんだ~?」
後ろから華音の首に手を回した刃が、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべた。
「何でも……」
ポツリと返した華音の視線はまだ、桜花の居た場所へ向けられていた。
「桜花か。名前の通り、桜の良い匂いがするよなぁ」
刃程のイヤらしさはないが、雷も頬が緩んでいた。
良い匂いを纏う可愛い女性に、男性の大半がこの様な反応を示すのだ。
刃も雷の言葉に同意し、華音のサラサラした髪を触った。
「でも、負けずにかがみんも良い匂いすんだよなー。名前に華が付いてるしな」
ふわりと香るのは、桜花とは対照的な洋風の花の香り。毎晩使っているシャンプーの香りだ。
我に返った華音は刃の手を振り解き、自分の髪に触れた。
「母さんが趣味で買ってるシャンプー使ってるだけ! オレの好みじゃないし、名前だって。オレは全身同じ石鹸でも良いと思うぐらいだよ」
「全身同じ石鹸だと、色々マズイぞ。髪軋む」
雷は苦笑しつつも、丁寧に指摘してあげた。
華音は見掛けによらず、自分自身の事に関しては雑なところがある。髪も服装もどうでもいいと思っているのだが、元が良いのでそれなりに見えてしまう。お得な外見だ。
刃は腹を抱えて笑っていた。
「さすがに、全身同じ石鹸はないわー! かがみん、マジでやりそうだから想像するだけで笑えてくる」
「中身じじいだな~ホント」
雷も一緒になって笑い始めた。
周りを行き交う生徒達が何事かと、3人を一瞥する。
華音は言い返すのも億劫なので、溜め息を吐いて歩き出した。
「早く帰るよ。今日、アニメ観るんだろ?」
「あ! そうだった! 早く帰んねーと」
刃が慌てて、華音の後を追い、雷は2人の背中に手を振った。
2人も雷に手を振り返し、お別れ。
華音と刃は並んで歩き出した。
教壇で、制服に身を包んだ赤茶色の長髪の少女が頬を桜色に染めて笑った。控えめながらも、教室内によく通る声は可愛らしく、まるでアニメの美少女を連想させる声だった。
席に着いている生徒達は、歓声を上げた。男子は完全に鼻の下が伸びている者が殆どで、女子でさえ「可愛い」を連呼する者が半数を占めていた。
黒板にはその名が、男性の担任教師によって見やすい字で書かれている。
担任教師は、珍しい転校生である彼女の肩をそっと掴み、スッと後方を指差した。
「あそこの席が空いているから、あそこに座りなさい」
「はい」
桜花は柔らかい声色で返事をすると、机の間の通路を歩いていった。その際、チェリーブロッサムの香りを残して。
桜花が近くに来ると、刃の顔がだらしなく緩んだ。
「俺、風間刃。よろしくね!」
「風間くんか。わたしの方こそ、仲良くしてね」
明らかな下心を露にしている相手に対しても、変わらぬ笑みを浮かべる桜花。ふと、一つの視線に気付いて足を止めた。
「…………キミは」
そこに居たのは華音だった。
華音は優等生らしく、人当たりの良い笑みを浮かべた。
「転校生だったんだ。オレは鏡崎……。よろしく」
「……下の名前は?」
「……とにかく、席に着いた方が良いと思うけど」
「うん。そうね。…………華音」
「え?」
通り過ぎた桜花を振り返ろうとしたが、担任教師の声でホームルームが始まってしまって前を向くしかなかった。
チャイムが鳴り終わると、一気に校内はざわつきが増した。教室のみならず、廊下にも生徒が溢れ、各々の休憩時間を満喫していた。
勿論、校舎一階の正面奥にある食堂も、もう既に生徒で一杯だった。床全面に赤い絨毯が敷かれ、純白のテーブルクロスのかかった丸テーブルが並ぶ空間は、最早ホテルの広間だ。たっぷりと日差しの入り込む窓際に、和、洋、中華、実に種類豊富なメニューが並べられ、受け付けを済ませた生徒達が自由に料理を取りに行っている。
華音も、親友2人と此処で昼食を摂っていた。
「にしても、桜花ちゃんってさ。めちゃめちゃ可愛いよな! 見た目だけじゃなく、声もアニメっぽいし」
肉を咀嚼しながら、器用に刃が声を発した。
アニメっぽいと言うのはともかく、可愛いと思ったのは他の2人も同じだった。
「性格も良さそうだしな」と、雷。
「でも、何かあの娘……」
教えてもいないのに、何故か下の名前を知っていた。こちらへ向ける視線も何処か穏やかでなかった気がする。
「何だよー。かがみん。イケメンだからって、そう簡単に落とせると思うなよ?」
刃がニヤニヤ笑い、華音は首を傾けた。
「何処に落とすんだよ。オレはそんな事する気はないけど」
「おい。大丈夫か、鏡崎」
雷は、イケメンで鈍感な親友を哀れに思った。
周りでは、華音の事を観察している女子が沢山居た。中には、華音が今日、天丼を食べているからと言って同じメニューにする者も。
誰にでも分かる好意を向けられていると言うのに、その本人は全く気付いていなかった。
暫く、談笑をしながら食事をしていると、急に刃が手を止めて華音――――否、その後方を見ていた。華音と雷もそちらを見遣る。
桜花だ。両手に料理を乗せた盆を持ち、困った顔でキョロキョロしている。料理を取ったはいいが、殆ど席が埋まってしまっていて座れないのだ。
先に席を取っておくべきであるのは当然で、しっかりしている見た目の割には要領が悪いなと、華音は密かに思った。
刃が手を挙げる。
「桜花ちゃん! 此処、空いてるよ」
桜花はハッと気付き、数歩近付いて来て、華音と刃の間が空席である事を確認すると、誰の顔も一切見ずに呟く様に言った。
「い、いいの?」
「いいのいいの! てか、寧ろ座って下さいっ」
間髪入れずに刃が言い、桜花にチラッと視線を向けられた華音と雷も小さく頷いた。
男3人……しかも、チャラチャラした印象を受ける刃の居る席に躊躇しつつも、桜花は小さく礼を言って座った。
テーブルに置かれたのは、揚げ物が大きな山を築き上げている天丼だった。
とても、可憐な女子が好むとは思えない、ボリュームたっぷりのメニューだ。男子である華音でさえ、中性的なので違和感があると言うのに。
「桜花ちゃんって、そう言うの食べるんだ?」
刃が興味津々に言うと、桜花はサッと頬を赤く染めて箸を握り締めた。
「ち、違うの。間違えただけなの。ほ、本当はわたし、カルボナーラが好きなの」
「そう言う事ってあるよねぇ。俺もよくコーラと烏龍茶間違えるんだー」
「それを俺に渡すんだよな。カルボナーラって、何か女子って感じだな」
刃と雷が何の疑いもなしに相槌を打つ横で、華音は温かい緑茶を啜りながら桜花の整った横顔を見た。
此処は自分で好きな料理を取るビュッフェ式。間違える筈がない。彼女が何故嘘をついたのか分からないが、性格に表裏がありそうなのは確かだった。
帰り支度を済ませた華音は、親友2人より先に校門へ向かった。生徒が出て行く、大きな門を一歩出ると、見覚えのある後ろ姿があった。今日転校して来たばかりの桜花だ。
しゃがんで何をしているのかと思えば、彼女は黒猫を愛でていた。チラッと見えた猫の瞳はルビー色で、宝石の如く美しかった。
華音が声を掛ける前に、桜花の方が華音に気付いて立ち上がって向き直った。
「……お昼はありがとう」
声は独特の可愛らしさを残しているが、少しだけ皆の前で話していた時とトーンが下がっていた。例えるならば、綺麗な花だと思って触ったら棘を纏っていた様な。
華音は桜花の微妙な変化に気付きつつも、穏やかな表情を保った。
「お昼? あぁ……別に。最初に、刃が赤松さんを呼んだんだけどね」
「刃って、あの金髪の? そういえば、教室で最初に自己紹介してくれたんだっけ。あの人、見た目からしてちょっと悪そうな……。ううん。良い人ではあったけど。もう1人の高木くん……だっけ? も、あんまり真面目そうではないし……」
2人の第一印象は良くなかった。転校生の桜花だけではない。他の生徒や教師にだって、あまりよく思われていないのは事実だった。
親友を悪く言われるのは良い気がしないが、他人の感情は他人のモノ。そこに決まりはないのだから、仕方がない事だと華音は飲み込んだ。
桜花は、心底心配する目で華音を見た。
「……今日転校して来たわたしが言うのも大きなお世話かもしれないけれど、キミって不良に絡まれているの?」
これも、よく訊かれる事だ。華音の答えは決まっていた。
「違う。2人は親友だよ」
「親友……。そうなんだ。ごめんなさい」
桜花は何処か寂しそうな表情をし、華音から視線を逸らした。
黒猫が桜花の細い足に擦り寄った。
華音は似ていると思った。黒猫と、すぐ近くの木の上に止まっている青みがかった烏が。
「ねえ。赤松さんは何者なの? もしかして、オレの事、知ってた?」
バサバサと、使い魔の羽音が響き、桜の葉が風に乗って華音と桜花の間に落ちた。
いつの間にか生徒達が居なくなり、2人だけの空間となった。
桜花は猫を抱きかかえ、口角を上げた。
「わたしはキミと同じ魔法使いよ。華音」
「え?」
また名前を、いや、それよりも魔法使い?
桜花に対する疑念が沸くと、後ろから親友達の声が聞こえた。
2人だけの空間ではなくなると、桜花は華音に背を向けて歩き出した。チェリーブロッサムの残り香がふわりと風に乗る。
「桜花ちゃんと何話してたんだ~?」
後ろから華音の首に手を回した刃が、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべた。
「何でも……」
ポツリと返した華音の視線はまだ、桜花の居た場所へ向けられていた。
「桜花か。名前の通り、桜の良い匂いがするよなぁ」
刃程のイヤらしさはないが、雷も頬が緩んでいた。
良い匂いを纏う可愛い女性に、男性の大半がこの様な反応を示すのだ。
刃も雷の言葉に同意し、華音のサラサラした髪を触った。
「でも、負けずにかがみんも良い匂いすんだよなー。名前に華が付いてるしな」
ふわりと香るのは、桜花とは対照的な洋風の花の香り。毎晩使っているシャンプーの香りだ。
我に返った華音は刃の手を振り解き、自分の髪に触れた。
「母さんが趣味で買ってるシャンプー使ってるだけ! オレの好みじゃないし、名前だって。オレは全身同じ石鹸でも良いと思うぐらいだよ」
「全身同じ石鹸だと、色々マズイぞ。髪軋む」
雷は苦笑しつつも、丁寧に指摘してあげた。
華音は見掛けによらず、自分自身の事に関しては雑なところがある。髪も服装もどうでもいいと思っているのだが、元が良いのでそれなりに見えてしまう。お得な外見だ。
刃は腹を抱えて笑っていた。
「さすがに、全身同じ石鹸はないわー! かがみん、マジでやりそうだから想像するだけで笑えてくる」
「中身じじいだな~ホント」
雷も一緒になって笑い始めた。
周りを行き交う生徒達が何事かと、3人を一瞥する。
華音は言い返すのも億劫なので、溜め息を吐いて歩き出した。
「早く帰るよ。今日、アニメ観るんだろ?」
「あ! そうだった! 早く帰んねーと」
刃が慌てて、華音の後を追い、雷は2人の背中に手を振った。
2人も雷に手を振り返し、お別れ。
華音と刃は並んで歩き出した。