彼女たちが正反対なものは、容姿や性格に留まらない。

 花園家はあやかしに対して反発している一族だ。あやかしのような儚い容姿の夢璃は、生まれたときから蔑みの対象である。
 その上、術師の名家である花園家に生まれた者は、遅くても十二歳となる頃には能力を開花させるはずであるが、夢璃は術師としての能力を目覚めさせることが出来なかった。
 このふたつの要因が決定打になり、夢璃は敷地の奥のあばら家に追いやられ、乳母によってひっそりと育てられた。
 中学までは学校に通わせてもらってはいたものの、「お前は花園家を名乗るのにふさわしくない」と言われ、殆ど縁を欠片も感じられない遠い親戚の名字を名乗らせてもらうしかなかった。
 義務教育を終えると高校に入学させてもらえるはずもなく、かといって世間様に出させてもらえることもないまま、間もなく十八を迎える夢璃は使用人として以上の過酷な扱いを受けていた。

 一方、妹の日葵は、平均的な年齢よりも早く術師としての能力を開花させている。
 天才として名を馳せ、次期当主候補として持ち上げられるようになると、姉である夢璃を馬鹿にしては使用人のようにこき使うだけでなく、虐げるようになった。

 自らの境遇の惨めさに夢璃の目じりに涙が溜まりそうになりかけていたとき、司の声が聞こえてきた。

『こいつ、また夢璃をイジメに来たのか!?』

 司の唸るように発せられた威嚇の声は、馬鹿にした口調の日葵には聞こえていない。司の声は今のところ夢璃にしか聞こえていないのだ。

(ううん。司のためにも、泣いちゃダメ)

 唯一の友人でもあり、守るべき存在でもある司のために気を引き締めた夢璃は、意を決して妹に問いかけた。