夢璃は司を抱えたまま、日葵のあとを着いていく。

「薄汚い金魚とお揃いの死装束がとってもお似合いよ」

 白い布に包まれた赤金色の司と、白装束を纏う朱の瞳の夢璃を眺め、日葵があざ笑う。
 普段の夢璃ならば、司が薄汚いと言われたことに、口に出さずとも内心では反論しようとしただろう。
 しかし、司を失ったことで絶望し、無気力となった夢璃の耳には、日葵の皮肉は届かない。

(お揃いの衣装を着てみたいって、司が言ってくれたね……。だけどこんな風に叶ってしまうなんて……)

 あばら家を囲う白い椿は、すべて切り落とされてしまったらしい。
 切り落としたあとに使用人達が拾い損ねたと思われる椿の花が一輪だけ、道端に落ちている。
 その様子は、白い椿の刺繍の白装束を纏う夢璃を見送るようでもあった。

 死装束姿の夢璃が連れてこられたのは、花園家の中央にある池だ。
 水面には数えきれないほどの白い椿が浮かべられている。
 生垣として咲き誇っていた椿達は、儀式のために切り取られたのだろう。

「ひっ……」

 しかし浮かぶ白椿の様子は、夢璃には純白の鱗を持つ金魚が力なく浮かんでいるようにも見えてしまう。
 夢璃の手のひらに収まり続ける司の儚い姿を思い出し、彼女は悲鳴をあげそうになった。

「なあに。今更怖気づいたの?」
「い、いえ……」
(冷たい……)

 夢璃は日葵の指示に従い草履を脱いで池に入る。深さはちょうど夢璃の胸の高さまであった。

(こんな風に広い池で、司が自由に泳ぐ姿を見てみたかったな)

 不意に、司を思った夢璃が、再び涙を零しながらも夢想する。

(きっと、綺麗だったと思うな……)

 池の周囲の喧騒に気付いた夢璃が俯かせていた顔を上げると、そこには多くの人間が集まっていた。皆、花園家に名を連ねる者達だ。
 中には、姉妹の両親の姿もあるが、死に逝く夢璃のことを気遣う素振りは一切見られない。彼らは日葵の次期当主の祝いと、秘術のお披露目を見に来ただけ。
 両親だけでなく日葵や親類……皆が、夢璃のことを儀式に必要な霊力を供給する贄としか思っていないことが、彼らの態度で容易に理解できる。

(私を心配してくれたのは、司だけだった……)