儀式当日の早朝。
次期当主の日葵自ら、夢璃の衣装を持ってあばら家までやって来た。
「これがお姉様の衣装よ」
「え……これ、は……」
しかし夢璃は、日葵が手渡そうとした衣装を見て、言葉を詰まらせ、伸ばしかけた手を止めてしまう。
「清廉で素敵でしょう?」
遠目から見れば、無垢な色の簡素な着物だ。
それがもし白無垢ならば、嫁に出されるのだと思えるだけ、まだ幾分か救いがあっただろう。
しかし、妹の手から蔑みの眼差しと共に強引に押し付けられた衣装は……。
『死装束じゃないか!? 冗談にしても酷すぎるよ!!』
「見て。裾には花園家の花が描かれているの。ようやく花園家の一員として認められたのよ、お姉様は」
日葵が裾をめくって見せた通り、白装束には大輪の椿がほぼ白に近い糸によって刺繍されている。
果たして、目を凝らさない限り認識できない花は、一族に認められたと言って良いのだろうか。
お前は一族に名を遺すことなく死ぬべきだと、しかしせめて一族のために役に立ってから散れと、白装束に描かれた刺繍が物語っているようにも感じられる。
(これまでなんのために生かされていたんだろう……)
次期当主の日葵自ら、夢璃の衣装を持ってあばら家までやって来た。
「これがお姉様の衣装よ」
「え……これ、は……」
しかし夢璃は、日葵が手渡そうとした衣装を見て、言葉を詰まらせ、伸ばしかけた手を止めてしまう。
「清廉で素敵でしょう?」
遠目から見れば、無垢な色の簡素な着物だ。
それがもし白無垢ならば、嫁に出されるのだと思えるだけ、まだ幾分か救いがあっただろう。
しかし、妹の手から蔑みの眼差しと共に強引に押し付けられた衣装は……。
『死装束じゃないか!? 冗談にしても酷すぎるよ!!』
「見て。裾には花園家の花が描かれているの。ようやく花園家の一員として認められたのよ、お姉様は」
日葵が裾をめくって見せた通り、白装束には大輪の椿がほぼ白に近い糸によって刺繍されている。
果たして、目を凝らさない限り認識できない花は、一族に認められたと言って良いのだろうか。
お前は一族に名を遺すことなく死ぬべきだと、しかしせめて一族のために役に立ってから散れと、白装束に描かれた刺繍が物語っているようにも感じられる。
(これまでなんのために生かされていたんだろう……)