夢璃と司が出会ったのは、彼女がまだ六歳の頃だ。
 術師の能力覚醒の平均年齢である十二歳よりも前の出来事で、その頃は成人を前にした今よりも生活は幾分かマシだった。

 真夏の学校帰りに縁日のポスターを目撃した夢璃は、家族だけでなく乳母にも内緒で夜に家を抜け出した。
 どうせ両親は夢璃のことを気にかけてなどいない。だから少しばかりいなくなっても気付かないだろう。そう思いながら、彼女は近所の神社で行われている縁日に潜り込む。

「わあ! ひともあやかしも、いっぱいいる!」

 暗くなった神社には沢山の提灯が灯っており、屋台の店員や客も、国内外の人間に留まらず、様々なあやかしたちで賑わっていた。
 あやかしを嫌悪する花園家に暮らしながらも、その容姿ゆえに一族の思考に染まらずにいる夢璃は、ワクワクとした心持ちで縁日を楽しもうとする。
 小学生低学年の少女がひとりで夜にうろついることもあり、時折迷子を見るような目で見られていたが、きょろきょろとあたりを見回す彼女は気にする様子もない。