一方、屋敷に戻った日葵は、苛立った様子で呟いた。

「ほんと、お姉様ったら、金魚に話し掛けるなんて気持ち悪い」

 優秀な術師として育った日葵にとって、不出来な存在が姉である事が許せない。
 自分が先に生まれれば良かったのに。そうすればあんな無能者が成人を迎える前から次期当主として振る舞うことが出来たのに。……と、彼女は普段から不満を漏らすばかりだ。

「それにしても、あの金魚。小さな頃から飼っているけど、どこで拾って来たのかしら。分不相応にも大事にしちゃって」

 そこまで言いかけた日葵は、ふと閃いた。

「良いこと思い付いたわ! 儀式の前に、お姉様にとびっきりの贈り物をしてあげないと!」

 ほくそ笑む日葵の表情は、とてつもない悪意に満ちていた。