「君、大丈夫?」
「僕、三年生の教室に用事あるおばあちゃんを案内してたんだけど」

 涙声の美少年。朝日が彼の髪の毛を透かして、ところどころ栗色に光っている。
 見てた見てた。あのおばあちゃん、何か誰かの忘れ物っぽい荷物を持ってた。

「うん、三年生は一階だよね。で君はどうして座り込んでるの? 体調悪い?」

 初めて見る子だ。顔色も悪いし、明らかに具合が良くなさそう。

「えっと、僕迷子になったみたい……ってえ?」

 低くてどこか甘い掠れるような声だった。

「え?」

 美少年が私の顔を見て驚く。何があったんだろう、と思い首を傾げると美少年も傾げる。私、どこにでもいる女子高生だと思うんだけど。黒髪黒目、ちょっと長い黒髪。いわゆるモブ顔。背も特別高くなく、低くもないし。スタイルも普通。

「君はどこに行きたいの?」
「職員室」

 ああ、なるほど。転校生か。そう言えば学ランも真新しい感じ。

「じゃあ、一緒に行こうか」

 私は手を差し出す。美少年は喜んだ様子で手を握る。