待ちに待ったクリスマスイヴがやってきた。
吹奏楽部のクリスマス会は、昨年よりもさらに盛り上がった。朝の九時開始、終了予定は午後一時、さらに今日に限り練習は一切なし、というのが部員たちの心をくすぐったのかもしれない。
普段は合奏に使っている大部屋に長机を三つ並べて、くじ引きで席順を決めていく。数人ずつでチームを組み、いろんなゲームをやった。普段は同じパートのメンバーと関わることが多いので、なかなか新鮮な組み合わせになった。
それとは別に、個人にビンゴのカードやクリスマスアンケートなるものが配られていく。
ビンゴの景品は各々持ち寄った、千円以内のプレゼント。ラッピングされて中身が分からないプレゼントを、ビンゴを勝ち抜けた順に選んでいく。早く上がったからといって、好みのアイテムがもらえるとは限らないのがおもしろいところだ。
クリスマスアンケートには、定番の質問から思わず笑ってしまうような項目までたくさん並んでいた。
クリスマス曲といえば?
クリスマスソングメドレー、演奏したいのはどれ?
ケーキとチキン、どっち派?
サンタ、トナカイのコスプレが似合いそうな部員は?
ずばり! あなたがクリスマスデートをしたい部員は!?
「これ、絶対美波ちゃんと風花ちゃんの企画だ」
「あ! それ私も思いました!」
「全力でふざけてるな」
トランペットパートの後輩である二人が作ったらしいアンケートは、各テーブルでかなり盛り上がっていた。
曲に関する質問だけは真面目に答えて、あとは思いつくがままに回答を書き込んでいく。
コスプレは似合う人、というよりも、楽しんで着てくれそうな人を選んだ。
難関は、クリスマスデートをしたい部員。
素直に答えるならばもちろん駿介だ。付き合っていることは隠しているが、気持ちまで隠す必要はないはずだ。片想いだと言い張ってしまえばそれまでなのだから。
でもその回答を美波や風花に見られることを考えると、なかなか恥ずかしい。からかわれることは覚悟しておかなければならない。
萌はしばらく悩んでいたが、周りの部員が続々と提出を始めていることに気がつき、空欄だったそこを埋める。
矢吹くん?
はてなマークをつけたのが、萌なりの精一杯の悪あがきだった。