海で出会った男女は恋に落ち、二人は同じ時を歩むようになる。

 字幕に続いて、スクリーンには私と純也がデートする映像が流れる。
 海辺の散歩したり、喫茶店でソーダを飲んだり、廃れたデパートのゲームセンターで遊んだり。
 それらはやはり、覚えていたり、覚えていなかったり。
 でも懐かしさと、恥ずかしさで身体がほくほくと熱くなってきた。

 そして、純也の屈託ない笑顔を見て、わかったことがある。

 それは、私は恋人役として純也と過ごす日々の中で、本当に純也のことを好きになっていったのだろう。
 これは思い出したことではなく、あくまで推論だ。
 その根拠は二つ。
 一つは、はじめはぎこちなかった私の笑顔がシーンが進むにつれ、とても柔らかくなり、心から楽しそうだと感じること。
 もう一つは今、スクリーン越しに純也に惹かれている自分に気づいたからだった。

 視界の隅でカバンの中が光ったのが見えた。
 観客はいないからいいか、と私はカバンを膝の上に置き、こっそりと通知を確認する。
『大丈夫?』
 メッセージの送り主である親友の名前と、画面に映る夏の景色を見て、私の記憶がまた呼び起こされる。