妖狐の襲撃から翌日。
僕は瀬戸さんと一緒にある場所へ来ていた。

「久しぶりの妖界だけど……アタシも来て良かったの?」
「うん」

不思議そうに尋ねてくる彼女に僕は頷く。
今回の件、はっきりいって僕一人で解決することはできない。

「本当は瀬戸さんを巻き込むべきじゃないんだけど……ごめん、今回は力を貸して」
「いいよ!」

笑顔で瀬戸さんは頷く。

「アタシに何ができるかわからないけれど、できることは協力するから」

色んな妖怪が行きかう道を歩きながら瀬戸さんはきょろきょろと周りを見る。

「凍真が誘拐されたと聞いて一緒についてきたけど、アタシ達、どこに向かっているの?」
「頼りになる人、かなぁ」

そういいながら角を曲がろうとした時。
瀬戸さんの腕を引っ張ってその場を離れる。

「あ、わ」

バランスを崩しそうになった瀬戸さんを守るようにしながら近くに引き寄せる。
轟音が僕達のいた場所に響く。

「え、なに?」
「ごめん。あれ」

戸惑う瀬戸さんにある方向を指す。

「あ?」
「やったか?」
「いや、手応えがねぇ」

金棒を地面に突き立てて、首を傾げている妖怪。

「あれって、鬼?」
「赤鬼だよ」

このタイミングで赤鬼と遭遇って呪われているか、何かだろうか?
はじめて新城と共に妖界へ訪れた際に遭遇した怪異。
彼らは強靭な肉体と筋力を持つが知能が低く、暴力を振るうのが大好きな種族。
ゲーム感覚で僕達を潰そうとしたのだろうか?
ため息を零しそうになりながら僕は彼らに声をかける。

「何か用事?先を急いでいるんだけど」
「あぁ?」
「ほれみろ、やっていねぇじゃねぇか」