僕は両手を地面につく新城に駆け寄る。
呼吸が荒く、額から滝のように汗が零れていた。
一体、何が起こって?

「呪いだよ。あぁ、くそっ」

片目を隠していた眼帯を新城は退かす。
目の部分。
びくびくと血管の部分が浮き出ていて、瞳の奥。
蒼い炎のようなものが浮き出ている。

「これは……」
「小さい頃にアイツにやられた呪いだ」
「フン、貴様が逃げるのが悪い。逃げようとした結果だ」

蒼い怪異が鼻音を鳴らして鋭い目で新城を見る。

「どれだけ足掻こうと、逃げようとしても私達は逃がしませんわよ?さぁ、里に戻りましょう?トウマ様。そして」

白い手を新城へ伸ばす緋い怪異。

「――結婚式(ぎしき)をあげましょう」


「結婚式?」

怪異の告げた言葉の意味を理解するのに数秒を有してしまった。
この怪異は結婚式といった?

「お前、いや、お前ら、まだ諦めていなかったのか」
「当然だ」
「この想いは十年、いえ、百年、千年過ぎたとしても決して消えはしません」

胸元に手を当てながら妖艶な笑みを浮かべる緋い怪異。
見る者を見惚れさせる姿がありながらも熱に浮かされたような視線を新城へ向けている。

「まさか、言葉通りの意味……そんなこと」
「あらあらぁ?」

僕の態度を見て緋い怪異が怪しく笑う。
その笑みは人を小ばかにするようなもの。

「もしかして、貴方、守りてでありながら何も聞かされていないのかしら?私達とトウマ様の関係も、何もかも」
「黙れ!」

戸惑う僕の横で新城が叫ぶ。
ふらふらとおぼつかない足取りながらもその目は真っすぐに怪異を睨んでいる。