「気持ちを伝えることは悪い事ではないのですよ?貴方は拒絶されることが怖いのでしょう?それは皆、同じです。ですが、怖がって踏み出さないよりも一歩、一歩だけでも踏み出した方が踏み出さなかった時よりも成長できるのです」

優しく蒼の頭を撫でながら伝える四葉の姿は子の身を案じる母親だ。

「わ、私はトウマの事が、トウマが好きです!」
「よく言えました」
「で、ですが、同時に怖いのです。この気持ちを伝えて拒絶されたら……私はひと時の感情に身を任せて目を抉ってしまった。奪われる、取られるという恐怖から……母上、そんな私が彼に、彼に愛される資格等」
「あーもう!!」

がしがしと髪をかきむしりながら新城が蒼へ視線を向ける。

「お前は昔からぐだぐだと悩みすぎ。勝手に一人で悩んでうじうじと勝手に結論を出すな!」
「……うぅ」

苛立ちをぶつけながら新城は蒼とこの時、はじめて目を合わせる。

「お前の事は嫌いじゃない」
「え……」
「でも好きでもない」
「ど、どっちなのだ。それは!」
「悪いけど、僕も同意見」

優柔不断な発言だよ。

「お前には言われたくない」

僕の視線に気づいたのか、新城は顔を顰める。

「どういう意味?」
「あぁ、もういい口を挟むな。これは俺の問題だ」

はぁ、とため息を吐かれる。
今のどういう意味だろう。

「蒼。俺は人間だ。長生きできないし、お前と生涯を全うなんていうのもできない。それでもお前は俺の事を好きっていうのか?」
「……先の事は私もわからない。だが、この気持ち、お前を好きだという気持ちを忘れることは絶対にないと思う。それだけははっきり言える」
「まずは友達からだ」

新城の言葉に蒼は目を瞬く。

「ここは愛の告白じゃないのか?」
「お前達から逃げ続けて何年だと思う?そんな長い期間から急に恋人関係だといわれても気持ちが受け付けません。まずは友達から長い交友関係を戻して行こう」
「あらあら、不甲斐ない発言ですわね。まぁ、及第点としましょう。二人の手助けを母がします。頑張りましょうね」