「貴方の目を治す方法は一つ、我が娘、緋と蒼の二人と体を重ねる事」

一瞬、頭が理解を拒んだ。
真顔で彼女はなんといった?
体を重ねる?
新城が緋と蒼と?
重ねるというのは、僕の予想している通りの意味なら。

「却下だ!どこに自分の娘の体を差し出す親がいる!?」
「ここにおります」

叫ぶ新城に対して、どこまでも四葉は冷静な態度をとる。

「本音を言えば、私もこの手段をとることは望んでおりません。ですが、貴方と緋、そして蒼。形はどうあれ繋がりができております。貴方を蝕む呪いが暴走し逆流すればそれは二人を蝕むことになる。変質した呪の危険性は貴方も理解している筈です」
「とはいえ、本人達の許可なくそんな話を――」
「当然、お受けいたしますわ!」

バン!と引き戸が開いたと思うとずかずかと話の二人がやってくる。

「トウマ様の呪を打ち消す為に必要とはいえ、そもそもの話、私と蒼はトウマ様を愛しておりますもの!私個人としては一人だけでトウマ様を愛することは最高ですが、最愛の妹、蒼も一緒なら尚の事」
「えい」

目をギラギラさせながら新城へ近づこうとする緋の頭に振り下ろされる四葉の拳。
岩一つ粉々にした拳を受けて床に崩れ落ちる緋。
ぴくぴくと体が痙攣しているから生きているだろう。

「姉様……」

ちらちらと新城を横目でみながら姉の心配をする蒼。

「全く盗み聞きとは困った二人です。後でお説教ですね。さて、緋はともかく蒼」

呼ばれた彼女はビクンと体を震わせる。

「は、はい」
「貴方の気持ちはどうなのです?」
「いや、私は」

俯き新城の方へ何度も視線を向ける。
向けられている視線に気づきながらも新城は四葉へ問いかけた。

「この場で聞いてどうするつもりだ?」
「気持ちの吐きだしは必要です。溜め込み続けていては誘のような奴に利用されてしまいます」
「母上、私は」