「結論から申し上げます。トウマの目は元通りになりません」

妖狐の里、その一室。
外で宴会が行われている中で僕と新城、そして目覚めた四葉の三人で話をしていた。

「戻らないんですか?」

僕の言葉に四葉は小さく頷いた。

「まぁ、予想はしていたけどな」

眼帯で隠している目をとんとんと叩く。
千切れた眼帯と別のもの。

「目を抉られて長い年月、この中に呪いを封じ込めていたんだ……本来ならすぐに解呪しなければいけないものを……変質するさ」

呪いの変質。
僕に仕込まれていた呪いも長い期間を経た事で変質をしていた。
治る事はなく、解呪することも出来ない。
それと似たようなもの。

「ですが、その呪いを解呪する方法があります。それは――」
「却下」
「え?でも、解呪できるのに?」

驚いて隣の新城をみる。
解呪できる方法があるのならそれを使えばいいのに。
何故、新城は否定するのか。

「ふざけたことを言っているんなら顔を洗ってきた方がいいな。この目の解呪の方法をわかっていて言っているのなら……何を考えている?」
「…………うふふふ」

口元を手元で隠しながら四葉は微笑む。

「やはり、成長しても優しいところは変わらずのようですね。母は安心しました」
「試したんですか?」

僕の問いかけに四葉は頷いた。

「ごめんなさいね。人間と妖狐の寿命は違う。私達にとっては一瞬の時間でも、貴方達にとっては長い時間の間にどのような変化が起こっているのかわからなかったから」
「……あ、そ」
「でも、さっきの提案は本気です。トウマ」

柔和な態度から一転して四葉は真剣な態度で新城をみる。