「どういうつもりだ。その人間は一体」

僕の姿を見て、金色の髪を持つ妖狐は戸惑いの声を漏らしていた。

「えっと、彼……いや、彼女は?」
「敵だよ。それ以外でも以下でもない」

いつもと変わらない様子の新城に安心したいところだけれど、体の至る所に傷があるところから苦戦していたんだろう。
そんな新城の言葉に妖狐が笑う。

「愛しい相手に対して酷いなぁ。ボクの愛は本物だというのに……それにしても彼が現れた事に驚いたなぁ。キミが驚いていないからして来る事は計画のうちだったのかな?」
「そうだ、といったら?」
「恐ろしい子だね。でもいいや、そこの邪魔な奴を始末すれば、すべて解決するわけだし。それに、絶望したキミの姿を見れるかもしれないって考えると少し、ワクワクするね」
「随分と歪んだ相手に好かれているんだね。新城」

愉悦に歪んだ表情を浮かべる妖狐。
顔が整った美女故か自身の欲望に染まった表情は、己の為に怪異を利用する人間と同じに思えた。
僕の嫌いなタイプだな。

「アホ抜かせ、一方的で歪んだ片思いだ。俺は微塵も好意を持っちゃいない。それよりも」

新城は隣で佇んでいる妖狐へ視線を向ける。
僕達の前に初めて姿を現した片割れ。
確か、蒼だっけ?

「アイツは誘に操られている。俺がなんとかするから」
「わかった。僕が抑え込むよ」
「少しは戸惑うなり、驚くことを、まぁいい。信じているからな」
「任せて」

十手を取り出して身構えた僕を見て誘という妖狐は笑う。

「面白いね。キミがどこまでやれるのか楽しみだよ。ほら、行けよ」

パチンと誘が指を鳴らす。
僕の眼前に白い髪を揺らして蒼が拳を振るう。

「っ!」

新城に手を引かれて後ろへ下がる。
少し遅れて彼女の放った拳が地面を砕いた。

「思考がないから筋力とか、何もかも全力だな」