「兄貴、服を用意しました」
「兄貴、草履をどうぞ!」
「兄貴、今日の献立に厚揚げがありますぜ!」
「あ、そう」

目の前で尻尾をぶんぶん振って好意を現す一尾の妖狐達。
少し前に凍真が倒した妖狐達。
彼らはどういうわけか新城凍真を「兄貴」と呼んで毎日、訪れていた。

「お前ら、暇なの?」
「……俺ら、一尾なんで名前もないし、二尾にならないと必要最低限の修業しかつけてもらえないんす」
「あぁ、そうだったな」

凍真はすっかり忘れていたが妖狐は尾が増える度に妖力等力が増していく。
生まれたての妖狐はほとんどが一尾で、成長、鍛錬を積んでいく事で尻尾が増える。
例外も存在する。

「俺達もさぁ、いつかは尾を増やしていくんだ!」
「そうかい」
「でも、兄貴は人間なのに俺達を圧倒した。あんなあっさりと多くの手をみせずに圧倒した兄貴の姿に惚れたんです。後、できるなら俺達を鍛えて強くしてください!」
「本音はそこか」

片目を閉じた状態で呆れる凍真。

「鍛えてやっても良いが俺はスパルタで容赦しない。泣き言や逃げ出しても無視して徹底的にやる。それでもよいな?」
「「「はい!」」」

一尾連中の鍛錬が始まった。
開始三十分で奴らは泣きべそをかいていたがやめることなく徹底的に鍛えていった。
そんなことがあり一週間が経過して。

「兄貴!みてください!狐火の炎がこんなに強く!」
「足が速くなって誰よりも獲物を手に入れられます!」
「見てください、小さいですけど、尾が一本でてきそうです!」