「ブッ」

脳天へ強烈な一撃が入って揺れる。
気持ち悪さと鼻から血がぼたぼたと落ちた。
こんなところで負ける?
いや、負けるわけにいかない。
僕は新城と約束をしたんだ。
彼を助ける。
助けたい。
だから、どうすれば奴に勝てる?
いや、方法はあるんだ。
これヲ使エば。

「驚いたな。まだ立つか?だが、意識が遠のいている筈だ。これ以上はお前の……なに?」



“彼”の異変に気付いたのは青山と紅痲だった。

「あれは……まさか」
「ほう、青鬼の、面白い奴が友達にいるなぁ」
「あれは友人の友人だ。直接の関係はない。お熱なのは娘だよ」

他愛のないやり取りをしながらも彼らは巻き込まれないように周囲へ結界を展開する。
瀬戸ユウリや、千佐那、配下の赤鬼達は気づかない。

「紅丸は大丈夫なのか?」
「わからなくなったなぁ。にしても」

ぺろりと唇の周りを舐める紅痲。
――あれは興味深い。

「なに?」

紅丸は自分が優位に立っている事から油断をしていた。
自分の前から人間が消える。
突然の事態に戸惑いを隠せず周囲を確認しようとしたら目の前に十手の先端が現れた。

「ぐっ!?」

十手は紅丸の額に突き刺さる。
鬼の皮膚は頑丈だ。人間の作った道具や武器で傷をつけることは難しい。
紅丸の皮膚に当たった所で十手の方が砕け散る。
そう、普通の十手ならば。
額に痛みが走り、後ろへたたらを踏む。

「貴様」