「じゃあ、決闘だね」

妖界の赤鬼が住まう里。
そこに青山と千佐那、瀬戸さんを連れた僕達の前にいるのは赤鬼の頭領の紅痲(べにめ)
二本の長くそして赤い輝きを放つ角。
纏っている着物を着崩して肌の一部をさらけだして妖艶な表情を浮かべる紅痲という赤鬼を前に青山は苦笑いを浮かべていた。

「そこはなんとかならないかね?ほら、そっち側に落ち度があるわけだしさ」
「仮に赤鬼が落ち度あるとして、じゃあ、そこの人間はどうして無事なのかな?わかっている筈。怪異に普通の人間が勝てない。そこの人間は祓い屋でもなんでもないであろう?」
「怪異が人間に勝てない。確かに俺達怪異の間の共通認識だがそれは絶対でないことを俺やアンタは知っている筈だ」

青山の指摘に紅痲はクックックと小さく笑う。
二人の話し合いは一時間も経過している。
事態の進展はない。
似たようなやりとりをしていて無駄に時間だけが過ぎている。

「足が痺れてきたんだけど」

僕の隣で瀬戸さんが顔を顰めている。
正座に慣れていない彼女はきついのだろう。
このままだらだらと時間が過ぎていくのは良くない。

「悪いですけど、無駄な事に時間を費やしていられないんです」

二人のやり取りに水を差すように僕は立ち上がる。

「人間、鬼同士の会話に口を挟むか?」
「悪いけど、そちらの都合は知らない。僕は助けたい人がいる。時間を無駄にできないんだ。そっちが決闘で力を貸してくれるというのなら僕は決闘を引き受けます」
「おい!」

青山が止めようとするが赤鬼が手で制す。

「面白い。面白いなぁ。本当にこちらと戦うというのか?余興としては楽しめるだろう。よし、紅丸」
「ここに」

紅痲の傍に控える鎧を纏った赤鬼が傍に立つ。

「こいつは赤鬼の中で最強と呼ばれる実力を持つ。もし、コイツを倒す、もしくは気絶させることができれば、従おう!」