陽の光が差し込んで新城凍真は目を覚ます。

「……人の寝顔を覗き見るなんて趣味が悪いって言われないのか?」

体を起こそうとした凍真は尋ねる。
彼が寝ている枕元、じぃっとこちらをみている妖狐が一人。

「うふふ」

口の端を広げながら白い指先が凍真の頬や額を撫でていく。

「ここに貴方がいるのが現なのか幻なのか、不安になりまして」

長い尾を揺らしながら妖艶な笑みを浮かべる妖狐。

「あぁ、まだ起きないでください」

凍真の体を伸びてきた尾がやんわりと押し戻す。

「おい」
「そんな冷たい態度をとらないでください。私……私達にとって久しぶりの再会なのですから」

伸びてきた手がさわさわと凍真の体を撫でていく。
大切なものを扱うような優しい動きにぞわぞわと凍真の体がわずかに震える。
誰にも触らせた事のない部分にまで手が伸びてきて咄嗟に阻もうと試みるも伸びてきた尾が両手に絡みついて動きを封じられていた。

「おい、この!」
「大人しくしてください。貴方はここで一番弱い存在……私達のような強い存在がいなければすぐに狙われてしまいますもの」
「だからお前に従えと?」
「共にあって欲しいのですよ。私達と一緒にいて欲しい。それだけのことです」
「その為に俺の自由は奪うと?」
「見解の相違ですわね」

やがて満足したのか彼女の尾から凍真は解放される。
体を起こしながら尾で拘束された部分を手ではらう。