(ああ、出てきちゃった。)
大学進学にともなう引っ越しの準備をしているとピンクや紫や黄色のハートが散りばめられたリングノートが出てきた。
不定期に書いていた日記、と言えば少しオシャレかもしれないが、実際はなんでもない、ただただ心の内を可視化する、自分に向けた独り言を書き溜めたノート。
ただでさえ引っ越しまで時間がないのにこんなものが出てきたらついつい見てしまって、準備どころではなくなってしまう。
「舞音、準備できた? 午後には郵便屋さん来るけど。」
「わかってるって。」
茶の間から2階の子供部屋に向かって叫んでいる母にそう答える。わかってる。もう、ここには私の居場所がないことも、私が大学に持っていけるのはダンボール6箱しかないことも、ここに残したものは全て捨てられてしまうことも。
わかっているけれど、このノートは捨てるわけにはいかなかった。
「本当にわかってるの?」
「わかってるって!」
さっきよりも大きく叫ぶように返事した。それと同時にあのノートは私のおでかけカバンにぐにゃりと曲げてしまい込んだ。
大学進学にともなう引っ越しの準備をしているとピンクや紫や黄色のハートが散りばめられたリングノートが出てきた。
不定期に書いていた日記、と言えば少しオシャレかもしれないが、実際はなんでもない、ただただ心の内を可視化する、自分に向けた独り言を書き溜めたノート。
ただでさえ引っ越しまで時間がないのにこんなものが出てきたらついつい見てしまって、準備どころではなくなってしまう。
「舞音、準備できた? 午後には郵便屋さん来るけど。」
「わかってるって。」
茶の間から2階の子供部屋に向かって叫んでいる母にそう答える。わかってる。もう、ここには私の居場所がないことも、私が大学に持っていけるのはダンボール6箱しかないことも、ここに残したものは全て捨てられてしまうことも。
わかっているけれど、このノートは捨てるわけにはいかなかった。
「本当にわかってるの?」
「わかってるって!」
さっきよりも大きく叫ぶように返事した。それと同時にあのノートは私のおでかけカバンにぐにゃりと曲げてしまい込んだ。



