それから加奈は十四日間生きた。

 僕は毎日加奈の元に通って、色んなことをした。
 ゲームに折り紙、お茶会、アクセサリーを作ったり、手を繋いだり、キスしたり……ちゃんと恋人みたいなこともした。
 加奈と一緒にする何かは全てがどこか懐かしくて新鮮でドキドキするけど安心できる。
 色んな感情がごちゃ混ぜで僕にもよくわからない。
 でも、ひとつだけ。どんな加奈も僕は大好きで愛してる。それだけは変わらない。
 遊びにも行った。全部話して、今度はちゃんと許可をもらってね。
 最初は驚いていたし、受け入れられなくて喧嘩もしてたけど、かなの思いはちゃんと伝わったみたいだ。
 いつからか、笑顔で送り出してくれるようになったらしい。
 遊園地でアトラクションに乗りまくってくたくたになったり、水族館でたくさんの魚を見たり、クレーンゲームでかなの半分くらいあるクマのぬいぐるみ取ったり、他にもたくさん色んなことした。
 美味しいご飯もたくさん食べた。病院では食べられなかった色んなお菓子も。
 加奈が興味を示したことは全部やった。
 かなの体調が悪い時は、懐かしい話をしたり、絵本を読んであげたりした。
 かなと一緒にいるだけで僕はどうしようもなく幸せだった。
 でも、その幸せが永遠でないこと。思ったよりもずっとずっと早く来ること。
 そんなこと、わかっているはずだった。
 最後の時、加奈は僕に感謝を述べた。
「幸せな時間をありがとう」
 苦しそうには見えなかった。
 そして、これからも夢を追いかけ続けて私みたいな人に幸せな時間を分けてあげてねってお願いも忘れずに……
 加奈は静かに目を閉じた。
 そしてもう僕に返事をくれることはなかった。
 ほんと、加奈にはかなわないよ
 僕は加奈のために医者になりたかった。
 だから、加奈が死んだら僕が医者を目指す理由なんてないはずなんだ。
 でも、僕は加奈を失ってもなおその夢を諦められなくなった。
 加奈は僕が医者を目指す新しい理由をいとも簡単に作り出してしまった。
 だって、加奈のお願いを僕が断れるわけないんだ。
 加奈はほんとにずるい女の子だ。
 でも、そんなとこも可愛くて大好きなんだ。
 だから、僕だって加奈が生きがいで加奈がいなきゃ生きてる意味なんて分からないのに。
 『加奈が望んだこと』それができなきゃ僕は死ねなくなっちゃったよ。
 だって、僕は加奈のことが大好きで、大好きで……そして愛してるから。