・【エピローグな日曜日】


 本当は、今日は許可取りの予定も無くて、だから一緒に居る予定ではなかったんだけども、早速デートをしようということになり、二人で外を歩くことにした。
 何もやることが無く、一緒に歩いているなんて不思議だと思いつつも、一緒に歩いて、一緒に喋っているだけでこんなに楽しいなんて。
 商店街を歩いていると、お肉屋の店主さんからイジられたんだけども、
「今、付き合いたてなんでそういうイジりやめてください!」
 真凛がハッキリ言って、そう何か、他の人に公認で言っていることにも、何だか感動してしまう。
 昼ご飯の時間になったところで、大きい公園へ行って一緒にお弁当を食べ始めると、なんと瑠璃がそこへやって来たのだ。
 しかもそれは偶然通りかかったみたいな感じじゃなくて、まるで待ち構えていたような感じで、俺はなんとなく嫌な予感がした。
 でももう言いふらされる心配も無いし、というか付き合っているし、瑠璃だって一応友達だし、でも何だこの妙な胸騒ぎは。
 どうにか収まってくれ、と思いと反比例して、瑠璃が真凛の隣に当たり前のように座った。
 それに対して真凛も何だか普通といった感じで、えっ、もしかすると真凛が瑠璃を呼んだの? と思った。
 どういう意味? マジでここからツツモタセって感じ? そんなわけないだろ、そんな長いスパンのツツモタセなんて。
 いやそんな長くない? 結構激動だったせいでちゃんと数えていないけども、もしかするとこんな感じになったのって、ここ三週間くらいの話?
 うわ、マジか、まさかこんなオチが、と脳内がブラックアウトしそうになった時、真凛がこう言った。
「瑠璃がどうしてもって言って、実はちょっと呼んじゃったんだよね」
 真凛のことを信じるって思ったけども、否、真凛のことを信じる。
 俺は真凛のことを信じる。
 悪い妄想なんてしない。
 俺は絶対に真凛……と思ったところで、瑠璃はフフッと怪しく笑ってから、こう言った。 
「気付いてた? あたし夢限のこと好きだったんだよっ」
「ばふぁー」
 俺は食べていたお弁当の白米を吹いてしまった。白米でまだ良かった。手作り料理じゃなくて。
 瑠璃は続ける。
「でも真凛が夢限に対してガチって言うからさ、あたしが引いたんだよっ、夢限は夢限で真凛の告白断らないとか言うしさー」
 そう少し寂しそうな流し目で、でも口元は笑っている瑠璃は、さらに続ける。
「夢限ってたらしだよねー、仲良し女子を喧嘩させちゃうくらいの男なんだからさー」
 すると真凛が、
「あれは勝手にアタシと瑠璃でやり合ってただけでしょっ」
「でも夢限が魔性だからっしょ」
「まあねぇ」
 と同調した真凛。
 いや、いやいやいや、あの時の喧嘩ってじゃあ、マジで俺のせいだったってこと?
 しかも何か、悪い意味じゃなくて、こんな意味での、って、マジかよ。
 瑠璃は優しい目元で、
「おめでとー……でも喧嘩したらすぐヘッドハンティングするからねぇっ?」
 とニチャリと笑って、煽るように言った瑠璃。
 すると真凛がめちゃくちゃ不満そうに、
「そういうこと言わないで! 絶対ダメだから!」
 と言ったんだけども、その表情を見ても『うっ』となることなくて。
 しかもこの日以来、不満そうな女性の表情を見ても『うっ』とトラウマが想起されることは無くなり、この時の、可愛い真凛の顔が浮かぶようになり、もう俺はあのトラウマが発動することは無くなっていた。

(了)