三十年前のこの日、僕達はこの月の下で出逢った。
 三十年後の同じ日に、僕達はこの月の下でもう一度出逢った。
「泣くなよお」
 あの日と同じように、夏希が僕をからかってくる。
「泣いてないよ」
 思いっ切り泣いているのに、僕はあえてそう答えた。
「そっか。感動して泣いているのかと思ったよ」
「感動はしているよ……月の綺麗さに」
 今日も月が神々しく輝いている。幻想的な光が周囲を優しく包んで、あの時のままの姿の二人を川面に映し出していた。