僕は狂ったように泣き叫んだ。今までみたいにこの場所で泣いている僕を宥めてくれる人はいない。僕の泣き声は静寂の闇夜を切り裂き、あの月にまで届くのではないか、というぐらい響き渡った。何時間そうしていたか分からないぐらい、僕はその場で絶望していた。月の光はそんな滑稽な僕一人のことだけを照らしている。
 この場所に来ればもしかしたら、と思っていた。奇跡が起きるのではないか、と本気で願っていた。でも僕の眼前には、現実という残酷な二文字がそびえ立った。本気で僕の人生は終わったと思った。奇跡なんて起きやしない。あるのはいつだってリアルな現実だ。人は時に夢を見ながら現実と向き合って生きている。
 でも、僕が向き合わなければならない現実はあまりにも残酷過ぎて、月の光で誤魔化さないと直視することができないぐらい生々しいものだった。僕は、現実という収穫を背に家路へと着く。僕の背後で光る月は、新たな主人公を欲するかのように輝きを増していた。