「よしっ。できたあ!」
 夏希の声が夜空に響き渡る。
 心無しか以前より声に力がないように感じる。痩せ細った夏希の笑顔にも皺が目立つようになり、水々しさが失われてきている。
「夏希、よく頑張ったね」
 僕は夏希の頭を撫でながら言う。
 すっかり心を許し合った僕達の間では、スキンシップも以前より頻繁に行われている。
「ありがとう、褒めて褒めてえ」
 と夏希が甘える。
 そんな夏希が愛おしくて堪らない。最近は僕よりも夏希の方が甘えん坊になってきている気がする。これが僕に対する愛情からであれば良いのだが、病による影響から心が弱くなっているのではないか、という疑念が湧かなくもない。
「夏希は本当に頑張り屋さんだよ。それと可愛いよ」    
 僕は不慣れながら甘い言葉を囁く。
「それからそれから?」
 それを聞いた夏希は、吹き出しながらねだってくる。
「……好きだよ」
 恥ずかしくて仕方がないが、夏希のためだ。僕にできることは何だってやるし、何だって言う。僕の言葉を聞いた夏希は穏やかな笑みを浮かべていた。