初めて夏希とキスをして以降、以前にも増して夏希のことを考える時間が増えていた。厳密に言うと濃度が濃くなった感じだ。一日中頭の中から夏希が離れない。
 あれからも毎日、夏希と会っている。幸い、雨が降ることはなく、天候も僕達の味方をしてくれている。ただ、夏希が咳込むことが増えた。元々白い肌がより白さを増して、青み掛かっている。夏希はいつも気丈に振る舞ってはいるが、確実に病魔が夏希の体を蝕んでいるのが分かる。僕が少し休んだ方がいいんじゃないか、と提案しても夏希は決して手を止めない。どうしても僕の絵を完成させたくて堪らない様子だ。
 夏希が余命宣告をされて今日で二十四日目だ。デッサンに割と時間が掛かっていて、今日で僕を描き始めてから七日目になる。微妙な表情を表現するのが難しいとのことで、時間を掛けている様子だ。僕的にはそこまで徹底しなくてもと思ってしまうのだが、夏希は僕の絵だからこそ拘りたいとのことだ。
 僕はただただ、夏希のことが心配で無理をして欲しくないと思っている。ただ、夏希が一番やりたいことをやって欲しいという気持ちもあり、その狭間で葛藤している。