「うーん、でもやっぱり笑顔かな? 私、夏樹の笑顔好きなんだあ」
 照れている僕を他所に、さらに照れるようなことを夏希は言ってくる。
「そんなに笑顔を見せた記憶ないけどな」
 僕が照れ隠しをしながら言うと、夏希は微笑みながら答える。
「確かに笑顔を見せる回数は多くないんだけどね、けどそれって夏樹が愛想笑いをしていないってことでしょ? 百パーセントの笑顔だけ私に見せてくれる。それが堪らなく好きなんだ」
 夏希の好きってフレーズに心の中で反応してしまう自分がいる。僕そのものを好きと言ったわけじゃないのに、心底自分が切ない生き物のように思える。
「笑顔が好きとか初めて言われたから恥ずかしいけど、凄い嬉しい。ありがとう」
 僕は素直に夏希に感謝の意を伝える。
 僕も夏希の笑顔が大好きだ。いや、僕は既に夏希そのものを好きになっている。思い返せば初めて出逢った日から僕は夏希に魅了されていたと思う。僕という人間の在り方を示してくれた。僕という人間を光で照らしてくれた。そんな夏希に僕は初めて出逢った日に恋に落ちていた。