夏希の描く絵は、素人目だと結構進んでいるように見えた。全体の配色は決まっているようで、おおよその完成図が想像できるぐらいの状態になっている。これ、完成に二週間も掛かるのかな、と僕は思った。
「夏希の絵、結構進んでるね」
「何か今日は調子いいんだよね」
 この調子が体調のことなのか絵のことなのか一瞬分からなかった。もしかして昨日は体調が悪い中、僕と一緒にいた? 僕が頭の中で疑問符を付けていると、それを察知したのか分からないが、夏希が説明を続ける。
「絵にもスポーツとかと同じで好不調の波があってさ、特に色塗りは本当にそれが顕著でね。でも今日は調子がいい」
 夏希の説明に安堵した自分がいる。この絵の調子のように夏希の体調も良くなればいいのに、なんて図々しいことを心の中で願う。
「調子がいいなら完成までの時間も早まる感じ?」
 僕は率直に疑問をぶつけた。
「うーん、そればっかりは分からないなあ。どこまで拘るかによるからさ。要するに私の気分次第ってやつ?」
 と言いながら夏希はいたずらっぽく微笑む。
 何故だか完成が早まることを期待していた自分がいる。それが何を意味しているのか、何となく理解できていた。