「すげえ! 本当に抜け道じゃん」
 十分ぐらいは時間短縮できた上に、足場も良く穏やかな帰路だった。これなら夏希の体にも障ることはないだろうと安心した。ふと自分がこんなに人の心配をする人間だったかと不思議に思った。道中、夏希の心配ばかりしていた。それは多分、単に彼女が体調が悪いからという理由だけではないと思う。
「これなら夏樹も今日から来るの楽でしょ?」
 夏希が微笑みながら言う。
 一度も毎日通うなんて言っていないけれど、元々そのつもりでいたので、そこにはいちいち触れない。
「何時ぐらいにあそこに来るの?」
「大体二十三時ぐらいだね。 あの雑誌の影響もあってさ、二十二時ぐらいまでは案外人がいたりするんだよね。だから一人になれる時間を狙って来てたんだけど、まさかの私より遅い時間に来訪者が現れた」
 夏希が少し意地悪な笑みを浮かべて言う。
「オッケー。じゃあ俺もそれぐらいの時間に来るよ。現地集合でいい?」
 何故だか分からないけれど、現地集合の方が良い気がしていた。それは多分、夏希も同じだった。