その日は夜が明けるまで夏希と語り合った。月が見えなくなるギリギリまで一緒にいた。感動したり怒ったり笑ったり泣いたり忙しい夜だった。
 僕はこのままここにいても良かったけれど、夏希は両親が心配するからという理由で、一度帰宅して夜にまた来ると言った。元々、毎日通い続けるつもりだったらしく、僕に気を遣ったわけではないと言う。
「夏希さ、体調悪いのにあんな足場が悪い所、毎日歩いてきて大変じゃない?」
 僕は夏希の身を案じた。単純に心配だったからだ。
「優しいじゃん。でもね、実は抜け道があるんだよ。私の家この近くなんだけど、実はここ子供の頃はよく家族と泳ぎに来たりしてたんだよね。でもまさか、こんなに月が綺麗に見える場所だとは知らなかった。灯台下暗しってやつだよね」
 夏希が少し誇らしげに言った。地元民ならではの優越感だろうか?
 夏希の言う抜け道を一緒に歩く。少し森の中に入っては行くものの、行きに来た道と比べればよほど平坦で足場も良い。そのまま森を抜けると、行きの道中で通った大きな道に出た。