あと五ヶ月で命が尽きる。
日向はクラスですぐに馴染んでいた。あの底なしの明るさで周りの人とどんどん仲良くなっていた。
相変わらず私は1人でいて、たまに日向が話しかけてくれることがある。
話す内容は日向の身近で起きた面白い話。
彼の話は面白いから、ついつい笑ってしまう。確かに私は疲れないし、これなら余生を満喫できるかもしれないと思った。
***
「日向くん、よく木下さんに話かけてるよね」
「それな、幼馴染って羨ましいな」
日向が来てから私のところにやってくる女子はわずかだが増えている。
話す内容は全部日向だけれど。別に何とも思わないから、適当に受け答えをしている。
それでも時々グサリと刺さる哀れみに満ちた視線。
どこか一線を引かれている。いや、最初に引いたのは私だけどね。
身長は高く容姿も割と整っているため女子からの人気は高まるばかり。
若干浮かれている日向もどうかと思うけど、楽しそうでなによりだ。
「日向くんって好きな子とかいるの?」
「いや、聞いたことないな」
「もしかしたら前のいた学校で恋人とかいたかも」
「えー、それは悲しい、でも日向くんなら応援したくなる」
女子たちが騒いでる間に思い返してみると、そういえば日向の恋愛相談は受けたことがなかったなと思う。
ずっと武尊のことで相談はしていたけど、向こうからは一回もない。
後であったら聞いてみようと思った。
それにしても、今日は日向が学校に来るのが遅い。
寝坊かな、そう思っていると「木下さん」と思わずドキッとなる。
振り返ると武尊がいた。たまに話すことはあったけど、その時は日向がいる時で初めて向こうから来てくれたかもしれない。
急激に体温が上がっていき、真っ直ぐに顔を向けることができない。
「どうしたの武尊」
「今日さ日向が風邪みたいで休みだって。今日の帰りに寄ろうかと思うんだけど、一緒に来ない?」
「え、行くよ」
武尊に誘われた、初めてのことで頭が真っ白になりそうだ。嬉しくて多分ここ最近いちばんの笑顔になっていると思う。
「たけるん、私たちも行きたい」
「そうだよ、一緒に行ってもいい?」
周りの女子が武尊に群がってきた。
武尊はクラスではいちばんモテていて、王子様というやつだ。
私が好きになってるし、好意を抱く子はもっといる。
そりゃ、みんな行きたがるよね、武尊はなんていうんだろう。
「みんなごめんね、小学生からの友人ってことで、今回は木下さんだけでいいかな、日向にも会いに行くことだし」
「えー」口々にいう女子は不満がっているようだが、私に一切目を向けない。
近くにイケメンがいるから目の保養にでもしているに違いない。
「じゃ、帰りね」
そう言って私の席から去る武尊、自分の席に行くのかと思いきや珍しく山川さんのところに行っていた。
2人で何か話していて、山川さんの嬉しそうな笑顔が何だか頭にこびりついた。
***
「日向は相変わらずだよな」
「本当にそう、変なところが全く変わってない」
「あとさあいつ、この前はーー」
武尊くんと話す内容は全部日向だった。
日向のおかげで武尊と会話が続いている、ありがとう日向!
日向の家は武尊の家から近いところにあった。最寄駅から降りて2人で話すことが新鮮すぎて何だか嬉しい。
もう死んでもいいかも、そう頭の中でよぎった。
「そういえば話変わるけど、2人って両思いだったりする?」
「ん、え? 違うけど」
日向と私が両思い? ないないない、即答すぎて自分でもちょっと日向に申し訳なさを感じる。
友達としてはいいけど、恋愛じゃないんだよなー、ごめんね。
「じゃあ、木下さん好きな人とかいるの?」
「え、えっと、どうでしょ……」
「その反応いるってことだ」
嬉しそうに話す武尊、まさかここで恋愛話になるなんて、これは少し期待をしてもいいのでは。
「俺、木下さんが好きなんだ」
「え、ん、えぇぇ?」
川が流れるように告白してきた……私はその場で立ち止まり武尊をまじまじ見据える。
彼は前を向いたままだった。しばらく無言の時間が流れる。
待って両思いだったの? だって今まで私は見ているだけで、まともに話したことはない。
どうやって話そうかを日向とずっと話し合っていたぐらいなのに、まさかこうなるなんて! 嬉しさが爆発しそうで言葉が続かない。
「……付き合わない?」
「え、いいの?」
「うん……好きな人を幸せにしたいし」
なんてセリフだろう、嬉しさで思わずにやけてほっぺが落ちそうだ。憧れの武尊に告白だなんて、人生ひっくり返ったのかと思うくらい衝撃が大きい。
「付き合おう武尊、私嬉しい」
「そっか」
武尊はそう言って歩き出す。
先ほどよりも少しだけ歩くスピードが早くなっている。
もしかして、照れてる? 嬉しいな、今なら飛べる気がする。
その日は日向にあってもずっと浮かれていた。
あー、私の人生残り五ヶ月で上がってきたよー、心の中でそう呟いて本音の海が小さくなっている気がした。
これでこの本音も消えてくれそう、そう安心していた。
でもこれは、ただの事件の引き金になるだけだった。
日向はクラスですぐに馴染んでいた。あの底なしの明るさで周りの人とどんどん仲良くなっていた。
相変わらず私は1人でいて、たまに日向が話しかけてくれることがある。
話す内容は日向の身近で起きた面白い話。
彼の話は面白いから、ついつい笑ってしまう。確かに私は疲れないし、これなら余生を満喫できるかもしれないと思った。
***
「日向くん、よく木下さんに話かけてるよね」
「それな、幼馴染って羨ましいな」
日向が来てから私のところにやってくる女子はわずかだが増えている。
話す内容は全部日向だけれど。別に何とも思わないから、適当に受け答えをしている。
それでも時々グサリと刺さる哀れみに満ちた視線。
どこか一線を引かれている。いや、最初に引いたのは私だけどね。
身長は高く容姿も割と整っているため女子からの人気は高まるばかり。
若干浮かれている日向もどうかと思うけど、楽しそうでなによりだ。
「日向くんって好きな子とかいるの?」
「いや、聞いたことないな」
「もしかしたら前のいた学校で恋人とかいたかも」
「えー、それは悲しい、でも日向くんなら応援したくなる」
女子たちが騒いでる間に思い返してみると、そういえば日向の恋愛相談は受けたことがなかったなと思う。
ずっと武尊のことで相談はしていたけど、向こうからは一回もない。
後であったら聞いてみようと思った。
それにしても、今日は日向が学校に来るのが遅い。
寝坊かな、そう思っていると「木下さん」と思わずドキッとなる。
振り返ると武尊がいた。たまに話すことはあったけど、その時は日向がいる時で初めて向こうから来てくれたかもしれない。
急激に体温が上がっていき、真っ直ぐに顔を向けることができない。
「どうしたの武尊」
「今日さ日向が風邪みたいで休みだって。今日の帰りに寄ろうかと思うんだけど、一緒に来ない?」
「え、行くよ」
武尊に誘われた、初めてのことで頭が真っ白になりそうだ。嬉しくて多分ここ最近いちばんの笑顔になっていると思う。
「たけるん、私たちも行きたい」
「そうだよ、一緒に行ってもいい?」
周りの女子が武尊に群がってきた。
武尊はクラスではいちばんモテていて、王子様というやつだ。
私が好きになってるし、好意を抱く子はもっといる。
そりゃ、みんな行きたがるよね、武尊はなんていうんだろう。
「みんなごめんね、小学生からの友人ってことで、今回は木下さんだけでいいかな、日向にも会いに行くことだし」
「えー」口々にいう女子は不満がっているようだが、私に一切目を向けない。
近くにイケメンがいるから目の保養にでもしているに違いない。
「じゃ、帰りね」
そう言って私の席から去る武尊、自分の席に行くのかと思いきや珍しく山川さんのところに行っていた。
2人で何か話していて、山川さんの嬉しそうな笑顔が何だか頭にこびりついた。
***
「日向は相変わらずだよな」
「本当にそう、変なところが全く変わってない」
「あとさあいつ、この前はーー」
武尊くんと話す内容は全部日向だった。
日向のおかげで武尊と会話が続いている、ありがとう日向!
日向の家は武尊の家から近いところにあった。最寄駅から降りて2人で話すことが新鮮すぎて何だか嬉しい。
もう死んでもいいかも、そう頭の中でよぎった。
「そういえば話変わるけど、2人って両思いだったりする?」
「ん、え? 違うけど」
日向と私が両思い? ないないない、即答すぎて自分でもちょっと日向に申し訳なさを感じる。
友達としてはいいけど、恋愛じゃないんだよなー、ごめんね。
「じゃあ、木下さん好きな人とかいるの?」
「え、えっと、どうでしょ……」
「その反応いるってことだ」
嬉しそうに話す武尊、まさかここで恋愛話になるなんて、これは少し期待をしてもいいのでは。
「俺、木下さんが好きなんだ」
「え、ん、えぇぇ?」
川が流れるように告白してきた……私はその場で立ち止まり武尊をまじまじ見据える。
彼は前を向いたままだった。しばらく無言の時間が流れる。
待って両思いだったの? だって今まで私は見ているだけで、まともに話したことはない。
どうやって話そうかを日向とずっと話し合っていたぐらいなのに、まさかこうなるなんて! 嬉しさが爆発しそうで言葉が続かない。
「……付き合わない?」
「え、いいの?」
「うん……好きな人を幸せにしたいし」
なんてセリフだろう、嬉しさで思わずにやけてほっぺが落ちそうだ。憧れの武尊に告白だなんて、人生ひっくり返ったのかと思うくらい衝撃が大きい。
「付き合おう武尊、私嬉しい」
「そっか」
武尊はそう言って歩き出す。
先ほどよりも少しだけ歩くスピードが早くなっている。
もしかして、照れてる? 嬉しいな、今なら飛べる気がする。
その日は日向にあってもずっと浮かれていた。
あー、私の人生残り五ヶ月で上がってきたよー、心の中でそう呟いて本音の海が小さくなっている気がした。
これでこの本音も消えてくれそう、そう安心していた。
でもこれは、ただの事件の引き金になるだけだった。