「突然意識を失って、今も目覚めないんです」
鈴心の説明を聞いて蕾生は驚くしかなかった。あの晩にそんなことが起こっていたなんて、想像もしていなかった。
「原因は? わかってるのか?」
永の方は冷静で、腕組みをしながら真剣な表情で鈴心に続きを促す。
「すぐにお兄様を呼んで診てもらいました。その見立てでは、キクレー因子が暴走しているようだ、と」
「──ハ?」
永は意外そうに驚いて声を漏らす。蕾生にはその意味もよくわからなかった。
「なんでキクレー因子が出てくるんだ? あれはツチノコが持ってるDNAなんだろ?」
永の問いに、鈴心は首を振って説明する。
「いえ、そもそもキクレー因子は鵺が保有しているDNAです。詮充郎が若い頃に銀騎家の持つ鵺のサンプルから発見しました。その後ツチノコもこれを持っていることが判明したんです」
「嘘だろ……」
唐突な真実に永は二の句が告げなかった。つまり、詮充郎は鵺由来であることを隠してキクレー因子を世界に発表したことになる。永がそれまで信じてきた知識の根幹が崩れてしまったのだ。
「こんな重大なことを報告しなかったお叱りは後で幾らでも。ですが、まずは話を聞いてください」
「……わかった。で? 鵺のDNAが何故彼女に?」
なんとか心の折り合いをつけて、永は続きを急かす。
すると鈴心が意を決して新たな事実を語った。
「星弥と私は銀騎詮充郎が作った、キクレー因子を生まれながらに保有するデザインベビーです」
「──!!」
「なっ──」
永も蕾生もそんなことは想像もしていなかった。
言葉を失った二人に、鈴心は後ろめたさを押し殺して淡々と説明した。
「詮充郎はキクレー因子を持つ受精卵を二つ製造することに成功しました。最初にできたのが私、次にできたのが星弥です。最初の受精卵にリンの魂を憑依させるのが難航したため、先に星弥が代理母を経て産まれました。その後、二年遅れて私が誕生したんです」
「それで妹って言ったのか……」
蕾生はとんでもない事実に息を飲む。これで鈴心が何故二歳下なのかも説明がついた。
だが、もはやそんなことはどうでもよくなった。永が恐ろしい顔で鈴心に確認したからだ。
「つまり、やっぱりリンは詮充郎に捕らえられて、挙げ句、実験台にされたってことだな?」
その勢いに圧倒されて、鈴心は弱々しく頷いた。
「そう、です……」
「──」
永の瞳は憤怒に燃えていた。
蕾生はその肩を掴んで宥めるようにさするけれど、自らも怒りがふつふつと湧き上がるのがわかった。
鈴心の説明を聞いて蕾生は驚くしかなかった。あの晩にそんなことが起こっていたなんて、想像もしていなかった。
「原因は? わかってるのか?」
永の方は冷静で、腕組みをしながら真剣な表情で鈴心に続きを促す。
「すぐにお兄様を呼んで診てもらいました。その見立てでは、キクレー因子が暴走しているようだ、と」
「──ハ?」
永は意外そうに驚いて声を漏らす。蕾生にはその意味もよくわからなかった。
「なんでキクレー因子が出てくるんだ? あれはツチノコが持ってるDNAなんだろ?」
永の問いに、鈴心は首を振って説明する。
「いえ、そもそもキクレー因子は鵺が保有しているDNAです。詮充郎が若い頃に銀騎家の持つ鵺のサンプルから発見しました。その後ツチノコもこれを持っていることが判明したんです」
「嘘だろ……」
唐突な真実に永は二の句が告げなかった。つまり、詮充郎は鵺由来であることを隠してキクレー因子を世界に発表したことになる。永がそれまで信じてきた知識の根幹が崩れてしまったのだ。
「こんな重大なことを報告しなかったお叱りは後で幾らでも。ですが、まずは話を聞いてください」
「……わかった。で? 鵺のDNAが何故彼女に?」
なんとか心の折り合いをつけて、永は続きを急かす。
すると鈴心が意を決して新たな事実を語った。
「星弥と私は銀騎詮充郎が作った、キクレー因子を生まれながらに保有するデザインベビーです」
「──!!」
「なっ──」
永も蕾生もそんなことは想像もしていなかった。
言葉を失った二人に、鈴心は後ろめたさを押し殺して淡々と説明した。
「詮充郎はキクレー因子を持つ受精卵を二つ製造することに成功しました。最初にできたのが私、次にできたのが星弥です。最初の受精卵にリンの魂を憑依させるのが難航したため、先に星弥が代理母を経て産まれました。その後、二年遅れて私が誕生したんです」
「それで妹って言ったのか……」
蕾生はとんでもない事実に息を飲む。これで鈴心が何故二歳下なのかも説明がついた。
だが、もはやそんなことはどうでもよくなった。永が恐ろしい顔で鈴心に確認したからだ。
「つまり、やっぱりリンは詮充郎に捕らえられて、挙げ句、実験台にされたってことだな?」
その勢いに圧倒されて、鈴心は弱々しく頷いた。
「そう、です……」
「──」
永の瞳は憤怒に燃えていた。
蕾生はその肩を掴んで宥めるようにさするけれど、自らも怒りがふつふつと湧き上がるのがわかった。