「で、銀騎が持ってる可能性が高い萱獅子刀からまず探したいって思ってるんだけど」
「そういえば、何回か前の転生で銀騎に奪われたって言ってたな」
蕾生は記憶を辿りながら、永に確認した。
「うん。で、リンと銀騎さんに聞きたいんだけど、何か知ってる?」
永がそこで尋ねると、星弥は首を振って答えた
「いや、わたしは。萱獅子刀なんて初めて聞いたもの」
「ああ、さっきの君の反応でそうかなって思ったけど、やっぱり。リンは?特に御堂の家で」
そう永が言うと、鈴心は少し挙動不審に目を泳がせて探るように口を開く。
「御堂の、ですか。ハル様は御堂の関与を疑ってると……?」
「鈴心の実家か? 銀騎の分家っていう」
「うん。実は前回、銀騎と揉めるついでに御堂とも揉めたんだよねー」
てへへ、と永が笑う。実は、というパターンは今までに何度もあったので蕾生もいちいち驚くのをやめた。
「御堂の家では……見たことはありません」
「そうかー」
鈴心の答えに残念そうにしながら、永は椅子の背もたれに軽く寄りかかって眉を寄せた。
「でも、永は刀は銀騎研究所にあるって思ってるんだろ?」
「そうだねえ、その可能性が一番高いとは思ってる。御堂から取り返すのは簡単だろうからね」
「刀は一度御堂ってヤツの手に渡ったのか?」
蕾生の疑問に、永は言いにくそうに答えた。
「ああ……うーん、なんか成り行きでね。ただ僕らは萱獅子刀がどうなったか見届ける前に鵺に殺されたから、よくわからないんだ」
「そうだったのか……」
生々しい表現に蕾生の口調も沈んでいく。
永は過去のことは何でも知っているのかと蕾生は思っていたが、死の間際のことを覚えていろと言うのは無理だし辛過ぎる。
今後はそういう話題も増えるだろう。永が辛い過去を思い出す必要性も重要性もわかってはいるが、なんとか緩和できないかと蕾生は考えを巡らせるが、良いアイディアが浮かばない自分に嫌気がさした。
少しの沈黙の後、星弥が少し明るい声音で話し出す。
「えーっと、すずちゃんの前で言うのもなんだけど、御堂の家は分家の中でも一番格下で弱い立場なの。もしそんな大事な刀を御堂が手に入れたとして、すずちゃんが見たことがないなら、お祖父様が取り上げたっていうのが私も自然だと思う」
「……」
星弥の説明を聞きながら、鈴心は俯いてしまっていた。少し顔色が悪くなっている気もする。
蕾生は少し気になったが、それを言ったところで上手い説明ができる自信がないので放っておくことしかできなかった。
「だとすれば、やっぱり銀騎研究所のどこかに隠してある──っていうのが濃厚な線かな。ちなみに、リンは研究所では見なかった?」
「はい。見たことはありません」
「そっかー」
御堂について聞かれた時よりも鈴心はきっぱりと答えた。その違いに永は気づいていないようで、むむむと口をへの字に曲げて腕を組み考え込む。
「ねえ。さっきから刀のことばかりだけど、お祖父様の懐に入るような行為は今は危なくない? 先に弓を探すとかは?」
「ああ、それはもっと難しい」
星弥の問いに永があまりにもあっさり答えるので、蕾生は思わず聞き直した。
「なんでだ?」
「慧心弓は──おそらく消失してる」
永はまるで失敗談を話すような深妙な面持ちだった。
「ふたつ前の転生の時なんだけど、鵺と戦った時に焼けてしまった……と思う」
「言い方が曖昧なのは、結果を見届ける前に死んだからか?」
蕾生がそう聞くと、永も鈴心も瞼を落として悲しそうに答える。
「そう。ただ、僕は弓が燃えたのは見た。その後どうなったかは知らないけど、あれはもう……」
「……」
二人は過ぎた過去に思いを馳せて、そこで黙ってしまった。
「そういえば、何回か前の転生で銀騎に奪われたって言ってたな」
蕾生は記憶を辿りながら、永に確認した。
「うん。で、リンと銀騎さんに聞きたいんだけど、何か知ってる?」
永がそこで尋ねると、星弥は首を振って答えた
「いや、わたしは。萱獅子刀なんて初めて聞いたもの」
「ああ、さっきの君の反応でそうかなって思ったけど、やっぱり。リンは?特に御堂の家で」
そう永が言うと、鈴心は少し挙動不審に目を泳がせて探るように口を開く。
「御堂の、ですか。ハル様は御堂の関与を疑ってると……?」
「鈴心の実家か? 銀騎の分家っていう」
「うん。実は前回、銀騎と揉めるついでに御堂とも揉めたんだよねー」
てへへ、と永が笑う。実は、というパターンは今までに何度もあったので蕾生もいちいち驚くのをやめた。
「御堂の家では……見たことはありません」
「そうかー」
鈴心の答えに残念そうにしながら、永は椅子の背もたれに軽く寄りかかって眉を寄せた。
「でも、永は刀は銀騎研究所にあるって思ってるんだろ?」
「そうだねえ、その可能性が一番高いとは思ってる。御堂から取り返すのは簡単だろうからね」
「刀は一度御堂ってヤツの手に渡ったのか?」
蕾生の疑問に、永は言いにくそうに答えた。
「ああ……うーん、なんか成り行きでね。ただ僕らは萱獅子刀がどうなったか見届ける前に鵺に殺されたから、よくわからないんだ」
「そうだったのか……」
生々しい表現に蕾生の口調も沈んでいく。
永は過去のことは何でも知っているのかと蕾生は思っていたが、死の間際のことを覚えていろと言うのは無理だし辛過ぎる。
今後はそういう話題も増えるだろう。永が辛い過去を思い出す必要性も重要性もわかってはいるが、なんとか緩和できないかと蕾生は考えを巡らせるが、良いアイディアが浮かばない自分に嫌気がさした。
少しの沈黙の後、星弥が少し明るい声音で話し出す。
「えーっと、すずちゃんの前で言うのもなんだけど、御堂の家は分家の中でも一番格下で弱い立場なの。もしそんな大事な刀を御堂が手に入れたとして、すずちゃんが見たことがないなら、お祖父様が取り上げたっていうのが私も自然だと思う」
「……」
星弥の説明を聞きながら、鈴心は俯いてしまっていた。少し顔色が悪くなっている気もする。
蕾生は少し気になったが、それを言ったところで上手い説明ができる自信がないので放っておくことしかできなかった。
「だとすれば、やっぱり銀騎研究所のどこかに隠してある──っていうのが濃厚な線かな。ちなみに、リンは研究所では見なかった?」
「はい。見たことはありません」
「そっかー」
御堂について聞かれた時よりも鈴心はきっぱりと答えた。その違いに永は気づいていないようで、むむむと口をへの字に曲げて腕を組み考え込む。
「ねえ。さっきから刀のことばかりだけど、お祖父様の懐に入るような行為は今は危なくない? 先に弓を探すとかは?」
「ああ、それはもっと難しい」
星弥の問いに永があまりにもあっさり答えるので、蕾生は思わず聞き直した。
「なんでだ?」
「慧心弓は──おそらく消失してる」
永はまるで失敗談を話すような深妙な面持ちだった。
「ふたつ前の転生の時なんだけど、鵺と戦った時に焼けてしまった……と思う」
「言い方が曖昧なのは、結果を見届ける前に死んだからか?」
蕾生がそう聞くと、永も鈴心も瞼を落として悲しそうに答える。
「そう。ただ、僕は弓が燃えたのは見た。その後どうなったかは知らないけど、あれはもう……」
「……」
二人は過ぎた過去に思いを馳せて、そこで黙ってしまった。