週末。そろそろ梅雨も本格化し毎日雨が降っていたけれど、この日曜の午後になって少し晴れ間が見え始めた。
それでも季節柄油断はできない。蕾生は教科書を数冊入れた学校用の鞄を左手に、右手には傘を持って永と連れだって歩く。
「今週の名目は中間テストの復習だってね」
「ああ、今日は一応教科書とか持ってきたぞ」
使うはずもないものを持って歩くのは面倒だが、永の様に何も持たずにいるのもなんだか気持ちが悪い。
先週は知らなかったからいいとしても、今日は口実がきちんとあるのだから、それに見合った格好で来るべきだと思った。蕾生はそう思ったのに、永は全く違っていたらしい。
「真面目だなあ、ライくんは」
「銀騎から連絡もらったろ? なのに手ぶらなのか?」
「だって僕、テスト間違えてないもん」
「ああ、そうかよ!」
にこやかに嫌味を言ってのける永に苛立った蕾生は鞄を振り回した。それは空を切って永の横髪を掠める。全く避けようとしなかった態度にもなんだかムカついた。
「いらっしゃい──どうかしたの?」
玄関を開けるなり、不機嫌な顔で立っている蕾生を見て星弥は首を傾げていた。
「いや別に……」
ブスったれた蕾生の後ろからひょっこり顔を出して永が笑う。
「僕が秀才過ぎて困るって話」
「──なるほど。イヤミだよね、それって」
永だけが手ぶらで来たことに即座に気づいた星弥は二人のやり取りも読み取ったのだろう、永に白い目を向けて冷たくそう言った。
蕾生がそれに無言で頷くと、永も些かの居心地の悪さを感じて話題を変える。
「鈴心チャンは今日もお籠もりかな?」
「うん……朝からずっとね。鍵はついてないから、引っ張り出そうとすればできないこともないけど」
星弥は少し暗い表情だった。毎週二人を家に呼んでおいて、肝心の鈴心には会わせてやれないことに少しの罪悪感を感じている。
それは永も感じ取っており、肩で息を吐いた後強がるように言った。
「できれば自分から出てきて欲しいんだけどね」
「わたし達が部屋の前で騒いだら、うるさくて出てくるかな?」
星弥のらしくない冗談に、蕾生も溜息混じりで呟いた。
「昔話じゃねえんだから……」
「あ、でもそれ使えるかも」
不意に永が明るい声を出した。蕾生と星弥が注目していると、永はにんまりと微笑んでとりあえず腰を落ち着けようと言いながら、すっかり馴染みになった応接室へと急ぐ。
「鈴心チャンは自分専用の携帯電話って持ってるかな?」
「もちろん、持ってるけど」
「よーし、じゃあ、銀騎さんはこのアプリ、ダウンロードしてくんない?」
部屋に入るなりソファの定位置にちゃっかり座って、永は自分の携帯電話の画面を見せながら星弥にあるアプリを示した。
それでも季節柄油断はできない。蕾生は教科書を数冊入れた学校用の鞄を左手に、右手には傘を持って永と連れだって歩く。
「今週の名目は中間テストの復習だってね」
「ああ、今日は一応教科書とか持ってきたぞ」
使うはずもないものを持って歩くのは面倒だが、永の様に何も持たずにいるのもなんだか気持ちが悪い。
先週は知らなかったからいいとしても、今日は口実がきちんとあるのだから、それに見合った格好で来るべきだと思った。蕾生はそう思ったのに、永は全く違っていたらしい。
「真面目だなあ、ライくんは」
「銀騎から連絡もらったろ? なのに手ぶらなのか?」
「だって僕、テスト間違えてないもん」
「ああ、そうかよ!」
にこやかに嫌味を言ってのける永に苛立った蕾生は鞄を振り回した。それは空を切って永の横髪を掠める。全く避けようとしなかった態度にもなんだかムカついた。
「いらっしゃい──どうかしたの?」
玄関を開けるなり、不機嫌な顔で立っている蕾生を見て星弥は首を傾げていた。
「いや別に……」
ブスったれた蕾生の後ろからひょっこり顔を出して永が笑う。
「僕が秀才過ぎて困るって話」
「──なるほど。イヤミだよね、それって」
永だけが手ぶらで来たことに即座に気づいた星弥は二人のやり取りも読み取ったのだろう、永に白い目を向けて冷たくそう言った。
蕾生がそれに無言で頷くと、永も些かの居心地の悪さを感じて話題を変える。
「鈴心チャンは今日もお籠もりかな?」
「うん……朝からずっとね。鍵はついてないから、引っ張り出そうとすればできないこともないけど」
星弥は少し暗い表情だった。毎週二人を家に呼んでおいて、肝心の鈴心には会わせてやれないことに少しの罪悪感を感じている。
それは永も感じ取っており、肩で息を吐いた後強がるように言った。
「できれば自分から出てきて欲しいんだけどね」
「わたし達が部屋の前で騒いだら、うるさくて出てくるかな?」
星弥のらしくない冗談に、蕾生も溜息混じりで呟いた。
「昔話じゃねえんだから……」
「あ、でもそれ使えるかも」
不意に永が明るい声を出した。蕾生と星弥が注目していると、永はにんまりと微笑んでとりあえず腰を落ち着けようと言いながら、すっかり馴染みになった応接室へと急ぐ。
「鈴心チャンは自分専用の携帯電話って持ってるかな?」
「もちろん、持ってるけど」
「よーし、じゃあ、銀騎さんはこのアプリ、ダウンロードしてくんない?」
部屋に入るなりソファの定位置にちゃっかり座って、永は自分の携帯電話の画面を見せながら星弥にあるアプリを示した。