蕾生の言葉に星弥は懺悔でもするように声を震わせて告白する。
「そうかもしれない。でもわたし達はすずちゃんが元気でいられるようにずっと見守ってきた。大きくなるにつれて、検診の頻度も少なくなってきて、それはすずちゃんが元気になってきた証拠なんだって──思っていたかった。銀騎研究所は病院じゃないのに、ね」
「……」
その表情に、蕾生は何も言えなかった。
「周防くんと唯くんがここに来るまでは、そんな甘えた幻想で自分を誤魔化してたんだ。わたしも知りたいの、すずちゃんに何が起きてるのか」
それまでの自分を悔やみながら、星弥は意を決して永と蕾生を力強く見つめた。その瞳には新たな光が灯っている。
「話してくれてありがとう、と言っておくよ」
「永?」
少し穏やかな口調で永は星弥に頭を下げた。しかし次に顔を上げたその表情はこの世の者とは思えないほど冷たく、暗く、そして激しい怒りを携えていた。
「──でもおれは銀騎を許さない」
「……」
「──!」
蕾生も星弥も、永の剣幕に呑まれて身動きがとれなくなっていた。永の纏う怒りで周りの空気が震えているのではないかとさえ思う。
二人が息をすることも忘れて硬直していると、永はふっと力を抜いていつもの口調に戻った。
「──とは言え、今日判明した疑問の全てを解明するのはなかなか大変そうだなあ」
「お、おう……」
永の感情の底知れなさを目の当たりにして、蕾生は返事をするのが精一杯だった。
「ごめんなさい、わたしがわかるのはこれくらいなの」
「あー、やっぱり鈴心チャンに聞くのが一番手っ取り早いよねえ」
「そうだな」
情報の手詰まりを感じて三人が沈黙していると、永が急に手を叩いて星弥に話題を振った。
「そうだ。一番最初に言ってたよね、親戚の子が銀騎詮充郎の研究について知りたがってるって」
「うん」
「鈴心チャンは何を知りたがってるの?」
「ええっと、主にはお祖父様の研究の内容かな? 最初はうちの陰陽師稼業のことも知りたがってたけど、わたしがほとんど知らないことがわかったら聞かれなくなったな。それでお祖父様の論文を読んで、ここはどういう意味かとか持ってくるの。でもわたしもさっぱりで、答えられないと冷ややかな目で見るんだよ、『この役立たず』って」
なんとなくその表情がわかる気が蕾生はした。小さいくせに凄んだらなかなかの迫力はあるだろう。だが、続ける星弥の言葉は思ってもみないもので。
「その睨んだ顔がすごく可愛くて!」
頬を紅潮させて言う星弥に、蕾生はがっくりと肩を落とした。やはりちょっと彼女は計り知れない。
「ま、君の変態性はおいとくけど、リンも何かを調べてるってことか」
苦笑しながらも充分に心の距離をとって、永は先を促した。
「そうかもしれない。でもわたし達はすずちゃんが元気でいられるようにずっと見守ってきた。大きくなるにつれて、検診の頻度も少なくなってきて、それはすずちゃんが元気になってきた証拠なんだって──思っていたかった。銀騎研究所は病院じゃないのに、ね」
「……」
その表情に、蕾生は何も言えなかった。
「周防くんと唯くんがここに来るまでは、そんな甘えた幻想で自分を誤魔化してたんだ。わたしも知りたいの、すずちゃんに何が起きてるのか」
それまでの自分を悔やみながら、星弥は意を決して永と蕾生を力強く見つめた。その瞳には新たな光が灯っている。
「話してくれてありがとう、と言っておくよ」
「永?」
少し穏やかな口調で永は星弥に頭を下げた。しかし次に顔を上げたその表情はこの世の者とは思えないほど冷たく、暗く、そして激しい怒りを携えていた。
「──でもおれは銀騎を許さない」
「……」
「──!」
蕾生も星弥も、永の剣幕に呑まれて身動きがとれなくなっていた。永の纏う怒りで周りの空気が震えているのではないかとさえ思う。
二人が息をすることも忘れて硬直していると、永はふっと力を抜いていつもの口調に戻った。
「──とは言え、今日判明した疑問の全てを解明するのはなかなか大変そうだなあ」
「お、おう……」
永の感情の底知れなさを目の当たりにして、蕾生は返事をするのが精一杯だった。
「ごめんなさい、わたしがわかるのはこれくらいなの」
「あー、やっぱり鈴心チャンに聞くのが一番手っ取り早いよねえ」
「そうだな」
情報の手詰まりを感じて三人が沈黙していると、永が急に手を叩いて星弥に話題を振った。
「そうだ。一番最初に言ってたよね、親戚の子が銀騎詮充郎の研究について知りたがってるって」
「うん」
「鈴心チャンは何を知りたがってるの?」
「ええっと、主にはお祖父様の研究の内容かな? 最初はうちの陰陽師稼業のことも知りたがってたけど、わたしがほとんど知らないことがわかったら聞かれなくなったな。それでお祖父様の論文を読んで、ここはどういう意味かとか持ってくるの。でもわたしもさっぱりで、答えられないと冷ややかな目で見るんだよ、『この役立たず』って」
なんとなくその表情がわかる気が蕾生はした。小さいくせに凄んだらなかなかの迫力はあるだろう。だが、続ける星弥の言葉は思ってもみないもので。
「その睨んだ顔がすごく可愛くて!」
頬を紅潮させて言う星弥に、蕾生はがっくりと肩を落とした。やはりちょっと彼女は計り知れない。
「ま、君の変態性はおいとくけど、リンも何かを調べてるってことか」
苦笑しながらも充分に心の距離をとって、永は先を促した。