「ライくん、人魚のミイラがニセモノだったって!」
 
 弁当を食べ終わるやいなや、(はるか)が携帯電話の画面のニュース記事を目の前に掲げて興奮気味に言った。
 
「お前……」
 食後のパック牛乳を飲みながら、蕾生(らいお)は白けて永を見る。
 
「やっぱりかー、こういうのって大抵が見せ物として作られたヤツなんだよねー」
 
「お、おう……」
 また始まったな、と思いつつも蕾生は一応相槌を打った。
 悔しそうに歯噛みしながら永はさらに続ける。
 
「でも、地元の信仰対象なのに科学的メスを入れてくれたこのお寺には敬意を表したい」
 
 真顔で言う永には彼なりの矜持があるのだろうが、蕾生にはピンと来ない。
 
「そうか」
 なので相槌もおざなりになるのだが、大好きな未確認生物のことを語る時の永は気にしない。
 
「あーあ、ツチノコが本当にいたんだから、人魚だっていてもおかしくないのに」
 
「まあ、そうかもな」
 
「おとぎ話に出てくる綺麗なお姉ちゃんタイプの人魚じゃなくて、妖怪みたいな──半魚人?いや、半魚の獣?そんなタイプの新生物なら可能性はあると思うんだよねえ」
 
 流れるようにまくしたてる永の剣幕に、蕾生は少しあきれながら頷く。
 
「うん、まあ……」
 
「ライくん、そんなドライな感じでいると大発見があった時に腰抜かすよ?」
 
「いや、抜かさねえよ」
 
「わかんないよ?ツチノコが見つかった時だって、そんな態度の一般民衆が驚天動地で慄いたんだから!」
 
 そう言いながら、永は携帯電話の画面をいじって昔のニュースを出して見せた。