(はるか)はまず、と前置いて説明を始めた。

「基本の──っていうか、これだけはいつも変わらないことがあるんだけど。まず、僕とライくんは必ず同い年で近所に産まれるのね」
 
「へえ」
 
「ライくんの記憶はその都度リセットされてるんだけど、僕は物心がつくあたりからなんとなく前世の記憶を思い出してくるんだ」
 
「そうなのか」
 
 では永と一緒にいることも決められた運命だったのだ。蕾生(らいお)はなんだかこそばゆい気持ちになった。
 
「うん。で、繰り返してきた転生の出来事を思い出しながらなんとなく成長してくんだけど……」
 
「その間、俺は何してるんだ?」
 
「別に何も。君は健康に育ってくれたらそれでいいんだ」
 
 永はにっこりと笑って言う。蕾生はこれまで永と共に生きてきたことを振り返る。

 最初に永が助けてくれたのも、ずっと側にいてくれたのも、蕾生はずっと有難いことだと思っていた。加えてその理由も知ることになり、今まで何も知らなかった自分が情けなくなった。
 
「なんか、不公平だな。俺ばかり何にも知らずに暢気にしてて」
 
「やだなあ、そんなことないんだよ! その方が、僕は救われてる」
 
「……」
 
 沈みそうになる蕾生の肩をぽんと叩いて、永は更に明るい口調で言った。
 
「で! だいたい十五か十六になるころ、リンがどこからかひょっこり現れるんだ」
 
「ええ?」
 
 唐突な第三の人物の登場に、蕾生は思わず間抜けな声を出してしまった。
 
「状況はその時々で違うけど、だいたい僕達の住んでる街に引っ越してくるのが多いかな。その時にはリンも僕達と同い年で転生の記憶がある状態でやってくる」
 
「そいつはなんで俺達の居場所がわかるんだ?」
 
「リンが言うには、十五歳になる頃に突然記憶が蘇るんだって。夢を見るらしい。その夢の最後に現在の僕達の居場所が正確に出てくるんだって」
 
「すごいな、それ全部呪いのせいなのか?」
 
 蕾生はにわかには信じられなかった。ただでさえ、あのリンという少女には今の所良い印象はない。
 狙って自分達の元にやってくるなんて、逆に怪しいのではないかとすら思う。

 だが、永はそんなことは全く思っていないようだった。
 
「ものすごくご都合主義っぽくて笑っちゃうけど、僕とリンは呪いが三人を引き合わせてるって考えてる。ところが──」
 
 永も蕾生の戸惑いを当然のように受け止めながらも、困ったように笑いながら話していた。