総合棟、と書かれた看板がある建物の前に着くと、入口に何人かの男女が入っていく。ようやく人の気配を少し感じて、蕾生はほっとした。
永とともに中に入ると、小さなエントランスに小さく粗末な机が置いてあり、白衣をまとった女性が二人を見て話しかけてきた。
「こんにちは、見学の方ですね?」
小さな顔に大きな丸眼鏡で長い髪を後ろでひとつにまとめた、いかにも研究者風のその女性は永と蕾生の首元のネームカードと手元のバインダーを見比べて言った。
「周防永さんと唯蕾生さんですね。良かったわ、もう時間なのになかなかいらっしゃらないから心配しました」
「あ、スミマセン。ちょっと寝坊しちゃって。彼が」
永はにこやかに答えながら、肘で蕾生の胸をつついた。
「……っス」
特に悪びれずに蕾生は軽く会釈だけした。
職員であろうその女性は軽く微笑んで二人にパンフレットを渡した。
「もう皆さんお揃いですから始めますよ。空いてる席に座ってね」
「ハーイ」
永の良い子のお返事に笑顔を絶やさない女性の口元には真っ赤な口紅がひかれており、そこだけが紅く光る月のように際立って見えた。
永とともに中に入ると、小さなエントランスに小さく粗末な机が置いてあり、白衣をまとった女性が二人を見て話しかけてきた。
「こんにちは、見学の方ですね?」
小さな顔に大きな丸眼鏡で長い髪を後ろでひとつにまとめた、いかにも研究者風のその女性は永と蕾生の首元のネームカードと手元のバインダーを見比べて言った。
「周防永さんと唯蕾生さんですね。良かったわ、もう時間なのになかなかいらっしゃらないから心配しました」
「あ、スミマセン。ちょっと寝坊しちゃって。彼が」
永はにこやかに答えながら、肘で蕾生の胸をつついた。
「……っス」
特に悪びれずに蕾生は軽く会釈だけした。
職員であろうその女性は軽く微笑んで二人にパンフレットを渡した。
「もう皆さんお揃いですから始めますよ。空いてる席に座ってね」
「ハーイ」
永の良い子のお返事に笑顔を絶やさない女性の口元には真っ赤な口紅がひかれており、そこだけが紅く光る月のように際立って見えた。