「ライ……くん」
「ライ……!」
蕾生は立ち膝のままで、その目をゆっくりと開ける。自らの手元を見ながら懐かしい声を出した。
「俺は、戻ったの……か?」
「ライくん!!」
頭がまだはっきりとしていない蕾生に、永が勢いよく飛びかかった。
「わあ!」
その下敷きになった蕾生は永ごともんどり打って倒れる。
「ライ!」
さらにその上から鈴心がダイブした。
「ぐえっ!」
「ライくん、ライくん! 良かった! 良かった! 元に戻れるなんて! こんなことがあるなんて!」
「ライ……良かったです、ほんとに良かった」
永も鈴心も涙でべしょべしょになった頬を蕾生にぐりぐり擦り付けて喜ぶ。
「わ、わかった、から、降りてくれ……苦しい──」
そんな三人の様子を眺めながら皓矢はほっと息を吐いた。
「ああ、上手くいったようだ」
「良かった……」
星弥ももらい泣きをしながらそれを見守った。
「な、何ということを──何ということをしてくれたのだ! 皓矢ァ!!」
その状況を唯一良く思わない詮充郎は怒髪天をつく勢いで叫んだ。
だが、皓矢はそんな祖父に憐れみの視線を落として静かに言う。
「お祖父様、潮時です。鵺の件は僕が当主として引き継ぎ……ッ」
言い終わらないうちに膝を折った皓矢を星弥が慌てて支えた。
「兄さん!?」
「大丈夫、大丈夫だ。少し、力を使い過ぎただけだ」
息も荒く、とても疲れた顔だったが、皓矢はまた立ち上がる。
「お兄様、ライを元に戻してくれて、ありがとうございます」
鈴心も側まで駆け寄って嬉しそうに皓矢に礼を述べた。
「良かったな」
「──はい!」
その頭を撫でながら笑いかけてやると、鈴心は一筋涙を零して頷いた。
次に皓矢は永に向かって軽く頭を下げる。
「周防くん、虫が良過ぎるかもしれないが……お祖父様を許してくれないか。今後は銀騎家が全霊をかけて君達をバックアップするから」
「皓矢! そんなことは許さん! 鵺は、鵺は私の物だ!」
その後ろで喚く詮充郎の言葉は既に負け犬の遠吠えと化している。そんな哀れな老人に、永は真剣な面持ちで話しかけた。
「詮充郎、こうなったら腹割って話そうぜ。何故そんなに鵺にこだわる? 前回、おれ達が死んだ後、お前に何があったんだ?」
すると詮充郎は怒りで顔を真っ赤にして吠えた。
「何が、あった──だと? そうか、お前達は何も知らないのだな。私の、私の紘太郎をあんな目に合わせておいて、よくもそんな態度でいられるものだ!!」
「紘太郎──お前の息子か」
「そうだ、鵺を手に入れることは、紘太郎の死に報いることなのだ!」
蕾生もまたようやく立ち上がって詮充郎に言う。
「なら、聞かせてくれ。あんたが何を思って、何を背負ってここまできたのか」
詮充郎は口惜しそうに歯を食いしばりながらも語り始める。
「いいだろう。聞かせてやる、あの日のことを……」
「ライ……!」
蕾生は立ち膝のままで、その目をゆっくりと開ける。自らの手元を見ながら懐かしい声を出した。
「俺は、戻ったの……か?」
「ライくん!!」
頭がまだはっきりとしていない蕾生に、永が勢いよく飛びかかった。
「わあ!」
その下敷きになった蕾生は永ごともんどり打って倒れる。
「ライ!」
さらにその上から鈴心がダイブした。
「ぐえっ!」
「ライくん、ライくん! 良かった! 良かった! 元に戻れるなんて! こんなことがあるなんて!」
「ライ……良かったです、ほんとに良かった」
永も鈴心も涙でべしょべしょになった頬を蕾生にぐりぐり擦り付けて喜ぶ。
「わ、わかった、から、降りてくれ……苦しい──」
そんな三人の様子を眺めながら皓矢はほっと息を吐いた。
「ああ、上手くいったようだ」
「良かった……」
星弥ももらい泣きをしながらそれを見守った。
「な、何ということを──何ということをしてくれたのだ! 皓矢ァ!!」
その状況を唯一良く思わない詮充郎は怒髪天をつく勢いで叫んだ。
だが、皓矢はそんな祖父に憐れみの視線を落として静かに言う。
「お祖父様、潮時です。鵺の件は僕が当主として引き継ぎ……ッ」
言い終わらないうちに膝を折った皓矢を星弥が慌てて支えた。
「兄さん!?」
「大丈夫、大丈夫だ。少し、力を使い過ぎただけだ」
息も荒く、とても疲れた顔だったが、皓矢はまた立ち上がる。
「お兄様、ライを元に戻してくれて、ありがとうございます」
鈴心も側まで駆け寄って嬉しそうに皓矢に礼を述べた。
「良かったな」
「──はい!」
その頭を撫でながら笑いかけてやると、鈴心は一筋涙を零して頷いた。
次に皓矢は永に向かって軽く頭を下げる。
「周防くん、虫が良過ぎるかもしれないが……お祖父様を許してくれないか。今後は銀騎家が全霊をかけて君達をバックアップするから」
「皓矢! そんなことは許さん! 鵺は、鵺は私の物だ!」
その後ろで喚く詮充郎の言葉は既に負け犬の遠吠えと化している。そんな哀れな老人に、永は真剣な面持ちで話しかけた。
「詮充郎、こうなったら腹割って話そうぜ。何故そんなに鵺にこだわる? 前回、おれ達が死んだ後、お前に何があったんだ?」
すると詮充郎は怒りで顔を真っ赤にして吠えた。
「何が、あった──だと? そうか、お前達は何も知らないのだな。私の、私の紘太郎をあんな目に合わせておいて、よくもそんな態度でいられるものだ!!」
「紘太郎──お前の息子か」
「そうだ、鵺を手に入れることは、紘太郎の死に報いることなのだ!」
蕾生もまたようやく立ち上がって詮充郎に言う。
「なら、聞かせてくれ。あんたが何を思って、何を背負ってここまできたのか」
詮充郎は口惜しそうに歯を食いしばりながらも語り始める。
「いいだろう。聞かせてやる、あの日のことを……」