「ライくん、なのか?」
おずおずと永が手を伸ばすと、金色の鵺は怒る素振りを全く見せず、永をじっと見つめている。
「お、黄金の鵺だと? そんな、そんなものは文献にも載っていなかった。そんなものがあるとは……」
詮充郎も狼狽えながら鵺に手を伸ばした。
「ガアアッ!!」
すると鵺は詮充郎を見た途端に怒り猛って飛びかかり、その老体を組み敷いた。
「うわあああっ!」
「お祖父様!」
皓矢が青い鳥とともに詮充郎を助けようと身を挺するも間に合わず、鵺の鋭い牙が詮充郎に迫る。
「お祖父様!」
星弥もまたよろめく足をおして駆け寄って詮充郎を庇おうとその体に縋りついた。
「ライくん! もういい! ……こっちへおいで?」
永がそう叫ぶと、鵺はピタリと動きを止め、詮充郎の上からどき、ゆっくりとした足取りで永の側に座った。
「ライくん、本当にライくんなのか?」
永が呼びかけると、鵺は黄金色の瞳をくるりと動かして主人だと認めるように永を見つめていた。
「ライ、あなた──」
鈴心も側に寄ろうとした時、詮充郎が掠れた声で息を荒らげながら言う。
「皓矢、何をしている。とても珍しい鵺が顕現したのだ、あれを何としても我々の手に! 落ち着いている今が好機、術をかけろ!」
懲りない詮充郎の言葉に、永も鈴心も鵺を庇うように立ちはだかる。
しかし皓矢は静かに首を振った。
「いいえ、お祖父様。もうやめましょう」
「馬鹿を言うな! 絶好の機会ではないか!」
「先程までの黒い鵺ならそれもできたでしょう。ですが、あれはダメです。勝てる気がしません」
予想に反した皓矢の言葉に詮充郎は我が耳を疑った。
「な──んだと?」
「お祖父様、少しお怪我をされています。手当を……」
星弥がその腕を気遣うと、詮充郎はその手を振り払って当たり散らした。
「黙れ! 元はと言えばお前が鵺化出来なかったのが悪い! この出来損ないめが!」
「……ッ」
星弥が傷ついたような表情を見せると、鈴心は瞳に暗い光りを宿し、低い声を出す。
「詮充郎、星弥を愚弄するなら、今ここで貴方を殺します」
「グルルル……」
それに呼応して鵺もまた低く唸る。
「生意気な口を聞きおって……」
詮充郎がわなわなと震えながらも次の言葉が出てこない隙に、皓矢は打ち捨てられた萱獅子刀を拾って鵺に近づいた。
「何を──」
永が鵺を庇おうとしたが一歩遅く、皓矢は萱獅子刀の切先を鵺の額に当て何かを述べた。
「鎮虚温子……還」
するとその刃がまた鈍く光って、鵺の身体を黒雲が包んだ。
「てめえ! 何しやがった! 油断を誘ったんだな!?」
永が怒ってくってかかると、皓矢は抵抗せずに静かに言った。
「よく見ていなさい」
「え?」
「ああっ!」
鈴心の歓喜の声が響く。黒雲が徐々に晴れていく。そこには人間の姿に戻った蕾生がいた。
おずおずと永が手を伸ばすと、金色の鵺は怒る素振りを全く見せず、永をじっと見つめている。
「お、黄金の鵺だと? そんな、そんなものは文献にも載っていなかった。そんなものがあるとは……」
詮充郎も狼狽えながら鵺に手を伸ばした。
「ガアアッ!!」
すると鵺は詮充郎を見た途端に怒り猛って飛びかかり、その老体を組み敷いた。
「うわあああっ!」
「お祖父様!」
皓矢が青い鳥とともに詮充郎を助けようと身を挺するも間に合わず、鵺の鋭い牙が詮充郎に迫る。
「お祖父様!」
星弥もまたよろめく足をおして駆け寄って詮充郎を庇おうとその体に縋りついた。
「ライくん! もういい! ……こっちへおいで?」
永がそう叫ぶと、鵺はピタリと動きを止め、詮充郎の上からどき、ゆっくりとした足取りで永の側に座った。
「ライくん、本当にライくんなのか?」
永が呼びかけると、鵺は黄金色の瞳をくるりと動かして主人だと認めるように永を見つめていた。
「ライ、あなた──」
鈴心も側に寄ろうとした時、詮充郎が掠れた声で息を荒らげながら言う。
「皓矢、何をしている。とても珍しい鵺が顕現したのだ、あれを何としても我々の手に! 落ち着いている今が好機、術をかけろ!」
懲りない詮充郎の言葉に、永も鈴心も鵺を庇うように立ちはだかる。
しかし皓矢は静かに首を振った。
「いいえ、お祖父様。もうやめましょう」
「馬鹿を言うな! 絶好の機会ではないか!」
「先程までの黒い鵺ならそれもできたでしょう。ですが、あれはダメです。勝てる気がしません」
予想に反した皓矢の言葉に詮充郎は我が耳を疑った。
「な──んだと?」
「お祖父様、少しお怪我をされています。手当を……」
星弥がその腕を気遣うと、詮充郎はその手を振り払って当たり散らした。
「黙れ! 元はと言えばお前が鵺化出来なかったのが悪い! この出来損ないめが!」
「……ッ」
星弥が傷ついたような表情を見せると、鈴心は瞳に暗い光りを宿し、低い声を出す。
「詮充郎、星弥を愚弄するなら、今ここで貴方を殺します」
「グルルル……」
それに呼応して鵺もまた低く唸る。
「生意気な口を聞きおって……」
詮充郎がわなわなと震えながらも次の言葉が出てこない隙に、皓矢は打ち捨てられた萱獅子刀を拾って鵺に近づいた。
「何を──」
永が鵺を庇おうとしたが一歩遅く、皓矢は萱獅子刀の切先を鵺の額に当て何かを述べた。
「鎮虚温子……還」
するとその刃がまた鈍く光って、鵺の身体を黒雲が包んだ。
「てめえ! 何しやがった! 油断を誘ったんだな!?」
永が怒ってくってかかると、皓矢は抵抗せずに静かに言った。
「よく見ていなさい」
「え?」
「ああっ!」
鈴心の歓喜の声が響く。黒雲が徐々に晴れていく。そこには人間の姿に戻った蕾生がいた。