「リン、僕らに話してないことがまだあったんだね」
 
 とりあえず鈴心(すずね)を部室内に招き入れて座らせてから、(はるか)はまるで詰問するように言った。
 
「申し訳ありません……」
 
「妹って、どういうことだ?」
 
 俯いてまず謝る鈴心に、蕾生(らいお)は逸る気持ちで問うたが、永に先を制された。
 その雰囲気は少し、恐ろしい。
 
「その前に、何故、黙っていたんだ?」
 
 その剣幕に、鈴心は躊躇いながら答える。
 
「ハル様には言うべきだと思っていたんですが、常に星弥が側にいたのでお話する機会がありませんでした……」
 
「ふうん?弁解の言葉としては弱いね」
 
 永の言葉は驚くほど冷たい。
 その雰囲気に飲まれた鈴心は何も言うことができずに俯いて黙ってしまった。
 
「おい、永。鈴心に怒ってる場合じゃねえだろ」
 
 蕾生が取りなしても永は静かな怒りを隠さずに、鈴心に言い聞かせた。
 
「それはわかってる。けど、リン、お前はいつもそうだ。何か大事なことを抱えて、一人で苦しんでる。おれがそれに気づいていないとでも思った?」
 
「……」
 
 黙ったままの鈴心の肩を優しく掴んで、今度は目線を合わせながら永は穏やかに言った。
 
「いつか話してくれる、ってずっと待ってるんだよ?言っただろ?お前の分もおれが考える──おれが全部守るって」
 
「ハル様──」
 
 その声は震えていた。潤む瞳で永を見つめる様は、いつもよりも年齢相応に見えた。
 
「よし。じゃあ、話を聞こうか」
 
「はい。実は日曜日に家に帰った後、星弥と少しだけ会話したんですが──」
 
 永がにっこり笑って促すと、鈴心は少し辿々しくも三日前の状況を話し始めた。