「はぁ……」
もう何度、ため息をついただろう。
あのあと、私は病院に駆けつけてくれたお母さんに付き添われ、帰宅した。担当医から大きな問題はないとの診察を受けたからだ。
それから私はずっと自室にこもり、食事もろくに摂らないまま勉強机に座っていた。両親からはひどく心配されたけど、気分が悪いと言い張って、2階に上がってきてしまった。
手の中には、『日依へ』と書かれた白い封筒が一通。これは、映がさっきの事故の前に手に持っていたものだ。
病院からの帰り際、看護師さんから、救急隊員の人から預かっていたと言われ渡されたのだ。事故の時に散乱した荷物の中に、この手紙が混ざってしまったのだろう。
映が持っていたのは、やはり私宛の手紙だった。
これを読めば、映の気持ちがわかる気がした。
けれど、映の意思なくこの手紙を読むのは憚れて、こうしてなにもできず小一時間も見つめているというわけだ。
映はこの手紙で、私になにを伝えようとしていたのだろう。
いくら考えても答えが見つかるはずもなく、私は机に突っ伏した。
これからどうしよう。映はどうしてあんな態度をとったのだろう。
映の気持ちは、大抵のことならわかると高を括っていた。それなのに今は、まるでどこまでも実体のない霧を掴もうとしているように、なにもわからない。
喧嘩なんて、物心ついてから一度もしたことがない。いつだって映がどんな私のわがままも生意気も、大きな羽根で包み込むように受け止めてくれたから。そうやって、私はいつも映の優しさに寄っかかてばかりで甘えていたのだ。
今回は、私がどうにかする番なのかもしれない。
映とこのままなんて、絶対に嫌だ。
そして私は、一晩考えた末にひとつの計画をたてた。私なりの"仲直り大作戦"だ。