(基本的には一話完結型のグルメものベースですが、以下に大まかなストーリー構成を記述します)

冬を前に寒村を救ったトーマたちは、冬の魔物に舌鼓を打ちながら旅を続けていた。
聖女(魔術師)としては高い力量を持ちながら箱入りで世間ずれしているリィルを心配したハボック枢機卿が、リィルが寒村を救った噂を聞きつけて会いに来る。

「魔物食を聖女に強いるとは何事か!」と憤慨し、胸が大きくなったことから幼気なリィルを騙して良からぬことを致している、と邪推するハボックだが、トーマの料理を食べるリィルを見て、自らも実食することを決意する。
筆舌に尽くしがたいほどの美味しい料理を口にしたハボックは魔物食に関する考えを改めた。リィルは寒村を救ったことが認められ大聖女となる準備に取り掛かるため、トーマは魔物食を普及させための伝道師として王都に呼ばれる。

国王や上位貴族が納得する料理を作ってくれ――そう依頼されたトーマだが、ハボックと仲の悪い上位貴族が横やりを入れ、指定された魔物で料理を作ることになる。
指定されたのは全部位に毒を持った魔物ばかりだった。

御前料理に毒が出ればトーマは処刑されてしまうが、わざわざ無理をいって予定をねじ込んだのに「できませんでした」となればやはり社会的に抹殺されてしまう。

トーマの実力(と魔物食の美味しさ)を認めようとしないばかりか政争の道具にしようとしたことに憤慨したリィルは、聖女の力を使って全力で食材を解毒・浄化する。
料理人や貴族、国王を納得させたトーマとリィルは賞賛される。

が、自分たちをくだらない権力闘争に巻き込んだことや、本来は人を救うはずの聖女に食事の解毒をさせたことに対してトーマは激怒し、争う枢機卿と上位貴族、そしてそれを諫められない国王に説教をしてしまう。

「さて……不敬罪で縛り首になる前にトンズラするか」
「せっかくだから南に生きましょう! きっと美味しい魔物……じゃなかった、困っている人がたくさんいると思うんです!」
「リィル! いいのか!? 俺と一緒に逃げたら、お前まで——」
「大丈夫ですよ、ホラ」

 リィルの手には、国王と枢機卿の連名でトーマを”食の聖人”に任命する旨をしたためた書状が握られていた。

「トーマさんの言ってたことが正論過ぎて、誰ひとり反論できませんでしたからね。反省したみたいですよ?」
「それで、リィルは? 大聖女になるんじゃないのか?」
「聖女として、聖人様の下で更なる修養を積むって言ってきました」
「……さようか」
「あっ、あとコレ。ハボック枢機卿からです」

 封蝋が押された手紙には、「食の聖人としては尊敬しているがリィルに手を出したらおっぱいの聖人として歴史に名を刻んでやる」と書かれていた。魔物食に関する誤解は解けたものの、リィルの胸が成長した件はガッツリ疑われたままだった。

「ご、誤解を解きに行くぞ!」
「何言ってるんですか。旬の食ざ――ごほん。困っている人たちを待たせることなんて出来ません! 行きますよ!」

 こうして二人は再び美味しい魔物探し——それから困っている人を助ける旅に出た。