「貴様、俺がなんの魔法を使うか分かったから勝てるとか思っていないよな......良いだろう。俺の灰魔法の真の力、見せてやろう......」
「見せてみろやシスコン野郎がァ!!」
よし、少し時間が空いたから肺と気道の損傷もほんの少しだが回復した。
後は何故か斬れないバリアらしき物を破るだけだが、そっちの方の見当は全く付かん。やっぱり灰魔法とは別に防御系の魔法を使ってるのか?
『その線はちょっと薄いね~』
ナマコ神様? それはまた何でだ?
『んとね。防御魔法ってすっごい魔力と精神力を使うのよ。それを三十分なんて長い間展開し続けるのは現実的じゃない訳』
そういえばギルドマスターも俺の攻撃を受ける一瞬だけしか防御魔法を展開してなかったな......となると、俺に対する攻撃と防御を全て一つの魔法、灰魔法で行っている可能性が高い訳だ。
「――やれやれ。では、今度は僕から動こう」
レオノラの身体がブレたように歪み、消えた。
「消える事も出来んのか――」
「ヴッ――!!」
次の瞬間、鳩尾を殴られた俺は、意識が追い付く頃には後方へ吹き飛ばされていた。
ホノラと同等、いやそれ以上のパワー!
「グッ......流石はお兄ちゃんってか?」
「当然だ。兄妹喧嘩だって負けた事は無い」
また消えやがった!
落ち着けマツル......姿が消えただけで音が消えてる訳じゃない!
レオノラは音と気配を限りなく消してはいるが完全じゃない......ゆっくりとこっちに来ている......
「そこぉ!!!!」
俺の顎を刈り取る予定だった回し蹴りを辛うじて刀の峰で受ける事に成功した俺は、体勢を立て直す為に大きく距離を取った。
『うーん......何度見ても分からないね~。彼も“ユニークスキル”を持ってるんじゃないのかい?』
いや、違うな。姿が消えるのも灰魔法の一部、なんなら硬くて見えない防御魔法もその一部だ
取り敢えずあるとめんどくさいあの防御魔法を解く!
全身に空気を巡らせろ......全てを剣先に集中!!
「ガフッ!!」
呼吸をすると吸った空気と同じくらいの血が出てくる......なら!!
痛みすらも力に換える!
【我流剣術“刺突術”八気・東門六甲】
「ガァァァァ!!!!」
地面がヘコむ程の踏み込みを経て繰り出される突きがレオノラの目の前の防御壁に接触する。
ガシャァァァン!!!!
次の瞬間、防御壁が音を立てて砕け散った。
「な......何!?」
「ハッハッハァ!! お兄ちゃんの身体を護ってた壁の正体......それは“ガラス”だ!!」
「――どうやったかは知らないが、屈折率とかをなんやかんやして姿もついでに消してたんだろ!」
魔法があればなんでも出来るんだ。原理的なのは俺よく知らん!
レオノラは一瞬動揺こそしたものの、またすぐ表情に余裕が戻った。
「ふ......僕のホノラが着替え中とかの無防備な時に襲われないか確認する為にこの魔法を編み出したんだ......今までホノラ以外の誰にもバレた事なかったのだがな――――」
うわきも! でもホノラにはバレてんのか......その度にボコボコにされてるだろうに懲りない兄貴だな。
「まさか防御と姿消しの両方を同時に破られるとは......僕のホノラを誑かすような不届き者にしてはやるではないか」
「だからそんな事してないっての! マジ人の話聞かねぇなお前!」
「黙れよ下郎!! ならなぜ王国騎士団に入団するはずだったホノラが今冒険者をやっているのだ!! 貴様が誑かしたからだろうが!!」
「え、そうなの?」
「え?」
俺とレオノラの間にかなり微妙な空気が流れる。お互いがお互いの目を見るのも憚ってたのに今は目を見合わせてポカンとしている。
ホノラは――――
「ピュープスー......」
決してこっちを見ようとしない。ごまかしの口笛すらも吹けていない。これは何か隠してるな?
「おいホノラ!! ちょっとこっち来て説明しろ!!」
「う......分かったわよ......」
ホノラは全てを白状したのだった。
◇◇◇◇
ホノラの言うことには、本来ホノラは兄、レオノラ率いる王国騎士団が国に帰ってきたらそのまま騎士団に入団する予定だったらしい。
しかし、俺という存在が出現。ホノラはしめたとばかりに俺と一緒にギルドへ加入。そして今に至ると......
なぜそんなに騎士団に入るのが嫌だったのか聞いてみると、
「この兄貴と同じ場所で働くのは死んでも嫌」
と至極真っ当な答えが帰ってきた。
「で、結局どっちが勝ったの?」
ホノラが観客席に再び戻る前に質問を俺達二人に投げかけた。
うん、もうどっちでも良いかなって思ってたんだけど、これはもうレオノラに任せよう。
「どうする? まだやるって言うならやるけど」
「......今日の所は引き分けにしないか?」
「それがいいな」
という事でアッサリと引き分け、勝負の結果はいつかへ持ち越しとなったのだった。
「見せてみろやシスコン野郎がァ!!」
よし、少し時間が空いたから肺と気道の損傷もほんの少しだが回復した。
後は何故か斬れないバリアらしき物を破るだけだが、そっちの方の見当は全く付かん。やっぱり灰魔法とは別に防御系の魔法を使ってるのか?
『その線はちょっと薄いね~』
ナマコ神様? それはまた何でだ?
『んとね。防御魔法ってすっごい魔力と精神力を使うのよ。それを三十分なんて長い間展開し続けるのは現実的じゃない訳』
そういえばギルドマスターも俺の攻撃を受ける一瞬だけしか防御魔法を展開してなかったな......となると、俺に対する攻撃と防御を全て一つの魔法、灰魔法で行っている可能性が高い訳だ。
「――やれやれ。では、今度は僕から動こう」
レオノラの身体がブレたように歪み、消えた。
「消える事も出来んのか――」
「ヴッ――!!」
次の瞬間、鳩尾を殴られた俺は、意識が追い付く頃には後方へ吹き飛ばされていた。
ホノラと同等、いやそれ以上のパワー!
「グッ......流石はお兄ちゃんってか?」
「当然だ。兄妹喧嘩だって負けた事は無い」
また消えやがった!
落ち着けマツル......姿が消えただけで音が消えてる訳じゃない!
レオノラは音と気配を限りなく消してはいるが完全じゃない......ゆっくりとこっちに来ている......
「そこぉ!!!!」
俺の顎を刈り取る予定だった回し蹴りを辛うじて刀の峰で受ける事に成功した俺は、体勢を立て直す為に大きく距離を取った。
『うーん......何度見ても分からないね~。彼も“ユニークスキル”を持ってるんじゃないのかい?』
いや、違うな。姿が消えるのも灰魔法の一部、なんなら硬くて見えない防御魔法もその一部だ
取り敢えずあるとめんどくさいあの防御魔法を解く!
全身に空気を巡らせろ......全てを剣先に集中!!
「ガフッ!!」
呼吸をすると吸った空気と同じくらいの血が出てくる......なら!!
痛みすらも力に換える!
【我流剣術“刺突術”八気・東門六甲】
「ガァァァァ!!!!」
地面がヘコむ程の踏み込みを経て繰り出される突きがレオノラの目の前の防御壁に接触する。
ガシャァァァン!!!!
次の瞬間、防御壁が音を立てて砕け散った。
「な......何!?」
「ハッハッハァ!! お兄ちゃんの身体を護ってた壁の正体......それは“ガラス”だ!!」
「――どうやったかは知らないが、屈折率とかをなんやかんやして姿もついでに消してたんだろ!」
魔法があればなんでも出来るんだ。原理的なのは俺よく知らん!
レオノラは一瞬動揺こそしたものの、またすぐ表情に余裕が戻った。
「ふ......僕のホノラが着替え中とかの無防備な時に襲われないか確認する為にこの魔法を編み出したんだ......今までホノラ以外の誰にもバレた事なかったのだがな――――」
うわきも! でもホノラにはバレてんのか......その度にボコボコにされてるだろうに懲りない兄貴だな。
「まさか防御と姿消しの両方を同時に破られるとは......僕のホノラを誑かすような不届き者にしてはやるではないか」
「だからそんな事してないっての! マジ人の話聞かねぇなお前!」
「黙れよ下郎!! ならなぜ王国騎士団に入団するはずだったホノラが今冒険者をやっているのだ!! 貴様が誑かしたからだろうが!!」
「え、そうなの?」
「え?」
俺とレオノラの間にかなり微妙な空気が流れる。お互いがお互いの目を見るのも憚ってたのに今は目を見合わせてポカンとしている。
ホノラは――――
「ピュープスー......」
決してこっちを見ようとしない。ごまかしの口笛すらも吹けていない。これは何か隠してるな?
「おいホノラ!! ちょっとこっち来て説明しろ!!」
「う......分かったわよ......」
ホノラは全てを白状したのだった。
◇◇◇◇
ホノラの言うことには、本来ホノラは兄、レオノラ率いる王国騎士団が国に帰ってきたらそのまま騎士団に入団する予定だったらしい。
しかし、俺という存在が出現。ホノラはしめたとばかりに俺と一緒にギルドへ加入。そして今に至ると......
なぜそんなに騎士団に入るのが嫌だったのか聞いてみると、
「この兄貴と同じ場所で働くのは死んでも嫌」
と至極真っ当な答えが帰ってきた。
「で、結局どっちが勝ったの?」
ホノラが観客席に再び戻る前に質問を俺達二人に投げかけた。
うん、もうどっちでも良いかなって思ってたんだけど、これはもうレオノラに任せよう。
「どうする? まだやるって言うならやるけど」
「......今日の所は引き分けにしないか?」
「それがいいな」
という事でアッサリと引き分け、勝負の結果はいつかへ持ち越しとなったのだった。